66話 練習開始!
翌日早朝―
「ソフィーさん復活!!」
グリース村の宿で、今度はちゃんとしたベッドで寝てすっかり復活したソフィーは、宿の周りをランニングしていたその他一同と合流する。
ランニングを終えた紫音は、ソフィーに訓練相手になってくれるように頼むことにした。
「ソフィーちゃん、私の二刀流の練習に付き合って欲しいんだけど」
「いいわよ、シオン・アマカワ。私が相手になってあげるわ」
ソフィーはツンデレのテンプレポーズの指差しポーズで答えた後、ブレードを抜いて峰を返す。
「ありがとう、ソフィーちゃん」
紫音はソフィーに礼を言うと、刀を抜いて峰を返すと二刀流で構える。
(シオン・アマカワの二刀流って左手の刀は少し短いのね。あっちは防御用かしら?)
「あと、ソフィーちゃん。私まだ二刀流に慣れてないから手加減してね!」
「それ、練習になるの?!」
紫音の提案にソフィーは突っ込みを入れた。
「じゃあ、まずは軽めに行こうかしら」
ソフィーは紫音に突っ込むと右手から斬撃を繰り出す。
紫音は左に避けながら、その斬撃を右手の天道無私で受け流し、左の鈴無私でソフィーの顔目掛け突きを放ち寸止めする。
「こっち防御じゃないの!?」
ソフィーは慌てて、バックステップで距離を取った。
「ソフィー、思い込みは駄目よ。いまのが実戦ならアナタ死んでいるわよ?」
「実戦だったら、もっと鋭く斬るし連続で攻撃します!」
ソフィーはクリスの窘めにそう反論した。
「今のは、ソフィーちゃんが手を抜いてくれたらから、上手く捌けたよ。今の感じでもう少しお願い」
紫音はソフィーの適度な斬撃に、天音の剣術書の内容を思い出しながら、二刀流での攻撃を続ける。
「今日はこれぐらいしましょう」
クリスが二人を止める。
「ありがとうね、ソフィーちゃん」
「そうやって素直に感謝したって、何も出ないんだからね、シオン・アマカワ!」
「あと、私のことはフルネームでなくて、紫音でいいよ。希望は紫音お姉さんもしくは、紫音先輩だけど!」
紫音はソフィーの両手を握って、希望に満ちた眼で彼女に提案した。
「どっ、どうして私がアンタのことをお姉さんとか、先輩とか呼べなきゃなんないのよ! シオン・アマカワで充分よ!」
そう言って、ソフィーは耳まで真赤にして宿に駆けて行く。
紫音はがっかりした顔で、クリスの方を見た。
「まあ、少しずつ距離を詰めたらいいんじゃないかしら」
クリスは紫音に無難なアドバイスを送る。
その頃、一足先にミレーヌの屋敷に帰ってきたリズは、標的相手に練習していた。
「ミー、GCファミリア展開ッス!」
「ホ――」
「ミー、GCファミリア攻撃ッス!」
「ホ――」
リズは六つの標的に向かって、魔法の矢を一斉発射させる。
魔力(MP)の最大値を増やすにはMPを使うことであるため、実家からの帰ってくる時も宿については空に向かって限界まで撃っていた。
(指差し命令は、MP消費は少なくなくて済むッスが、ミーは胴体しか狙わないッス。これではいざという時、命中しても最大ダメージは望めないッス)
「アレが伝説のアイギスシャルウルか。クロスボウと珍妙な梟が宙を浮くとは、何と不思議な武器だ。まさに女神の神秘だな」
ミレーヌはアイギスシャルウルを見て、そう感想を口にする。
だが、ミレーヌが何より関心を持っているのが、可愛い姪の肩に居るファンシーな黒猫?の存在であった。
(アレは何なのだ? 一見ぬいぐるみのように見えるが、明らかに金属でできている。フェミ・ローズ様に貰ったと言っていたが、そもそもフェミ・ローズって誰だ? サンタ・ローズ様の上位存在らしいが……)
心配になったミレーヌは、女神の栞(業務用)を職権乱用で使用して、フィオナにフェミニース教に関わりがある人物か聞いてみることにする。
(フェミ・ローズ様は素晴らしい方です、サンタ・ローズ様のさらに上位な存在です。そんな方に会えるなんて、ミリアちゃんの日頃の行いがいいから会えたのよ。たくさん褒めてあげて。これからも、貴方達にフェミニース様の加護がありますように)
すると、彼女からの返信はこのように返ってきたので、親友を信じることにした。
そして、さっそく言われた通りにミリアを褒めることにする。
「ミリアちゃんは良い子だね~」
ミレーヌはミリアを抱きしめながら頭を撫でる。
「ミレーヌさん、突然何?」
突然の行為に困惑するミリアにミレーヌは、キリッとした表情でこう答えた。
「フィオナがミリアちゃんを褒めろと言ったんだ! だから、私は彼女の指示に従っているだけなんだ。だから決して、私の私利私欲ではないんだ! 全てはフェミニース様の御心のままに…… なんだ!」
そう言い訳して、欲望のままに彼女に抱きついてミリア成分を補充する。
その頃紫音一行は、アルトンの街の一つ前ケルトの町に辿り着ついていた。
紫音は、眠る前までソフィーに付き合ってもらって、二刀流の技の練習をする。
(シオン・アマカワ、日に日に上手くなっている。移動中も本を見てイメージトレーニングしているみたいだし、夜もこうやってギリギリまで練習している。アマネ様の血筋で強いのかと思っていたけど、努力型なのね……。嫌いじゃないわ。)
ソフィーは紫音を少しだけ評価すると、更に彼女をじっくりと観察することにした。
(それに何より、よく見ると剣を振るっている姿が、凛としていてちょっと格好いいじゃない……。はっ!? 何を思っているの、ソフィー! 貴方には、お姉様って人がいるじゃない…!)
ソフィーが邪念に支配され隙ができた所を、逃さず紫音が打ち込み寸止めする。
「はう!?」
寸止めとは言え刀が不意に顔の前に現れ、びっくりしたソフィーは変な声をあげてしまった。
「集中力が切れたみたいだね。今日はもうおわりにしようか」
紫音がソフィーの先程の隙だらけの様子を見て、そう提案する
(女神武器を手に入れてから、宿についてからずっと練習に付き合って貰っているから、疲れているのかな…)
「ソフィーちゃん、三日間練習に付き合ってくれてありがとうね」
紫音は練習に付き合ってくれたソフィーにお礼をした。
「これくらい、たいしたことないわ」
「ソフィーちゃんを、初めて見て見た時から悪い子じゃないと思っていたけど、やっぱり良い子だったね」
「にゃ、にゃによ、いきなり! 褒めたって、何も出ないんだからね!」
ソフィーは褒められて、少し動揺していまいおかしな喋り方になってしまう。
「初めて会った時から、運命的なものをソフィーちゃんに感じていたよ。それは私とソフィーちゃんは、ヒンヌー組の同士だからだよ!」
紫音はそう言ってソフィーに親指を立てたポーズでそう発言した。
説明しよう! ヒンヌー組とは、【品乳】の旗のもとに集った者達によって、結成された組織である。
厳しい鉄の掟、局中法度が定められており、
一、品乳に背きまじき事
一、サイズが大きくなり、局を脱するを許さず
一、勝手にパッドを入れて大きくさせないこと
破りしものは切腹(自腹を切って奢りましょう)
「そんなもの入った覚えもないし、入る気もないわよ!!」
折角練った設定をソフィーに一蹴された。
こうして、女神武器を手に入れてから三日目の夜が過ぎ、明日はアルトンの街に帰ることになる。
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