悲哀
HIRO
霊の見える者達
「ふぁ……」
俺は欠伸を噛み殺しながらカレンダーを見る、2010年5月、時間はまだ7時か
飯食って、歯磨いて、制服に着替えて学校には余裕で間に合うな。
そんな事を考えながら寝間着姿のまま、リビングへと降りていく。
「おーっす」
「おっす、けんぼう、トーストもう焼けてるぜ」
「さんきゅー、たてぼう」
リビングでは既に制服姿の俺の相棒、
親友にして相棒の楯谷とはけんぼう、たてぼうと呼び合う仲だ。
ここから徒歩20分ほどの高校に親元を離れこいつとシェアルームをしながら通ってる、別に親子仲が悪い訳じゃないぜ。むしろいい方だと思うかな。
裕福ってわけじゃないのに、高校に通わせて貰ってるんだからな。
「そうだ、テレビつけるぜ」
『おはよーございまーす! 今日の天気ですがー』
「いつ見ても綺麗だよな、
最近人気急上昇中の相田真菜子というタレントだよ、胸が大きいのが特徴。
まぁ、タレントに俺は興味が無いんだ適当に流させてもらうぜ。
さてと、他に何か……ああ、そうだ
「今日は仕事なんかあったっけ?」
「裏の爺ちゃんが狐の動物霊を見たってさ、後警察からストーカーの幽霊が出たとかで除霊依頼が来てるぜ」
「除霊は俺だな、動物霊はたてぼう、やれるよな」
「俺だって同じ霊能力あるんだぜ、任せろ」
俺達は所謂、幽霊が見える霊能力者という奴だ、2000年くらいに幽霊の存在が政府から大体的に発表され霊能力者が職業として認められたって知ってる
るか?
まぁ、その数は物凄く少なく全国で3桁程いくかいかないかみたいだぜ、この神奈川で言えば俺達くらいさ。
「ま、それもこれも、学校に行ってからだけどな、俺達の本分は学業だぜ」
「学生だもんな」
まぁ、だからと言って、何でも幽霊事件なら請け負うってわけじゃないけどな、学生らしく学業に勤しむ日々さ
それにしても世間は不景気とニュースで流れるばかり、俺達の時代は就職氷河期だなんだなんて散々言われてるよな。
未来に展望も希望も約束された勝利なんてものも無さそうだよ。
それでも働かにゃいけないし、学歴が見られるから高校に通わにゃならん何の為になるのかね、日々そう思うばかりだよ。お前もそう思うだろ、な。
「そろそろ迷わず逝ってくれ、お別れだ」
『ありがと……mす』
それだけ言えば聞き取りにくい感謝の言葉と共にその気配は消える。
悪霊という訳じゃないが、こういうのがごろごろいるのが最近の世の中だ。
「あー、また自殺した何某の霊がここに来たの?」
「見た目からして就職失敗した20代男性、冥福を祈るばかりだよ」
「はぁ、この先どうなるのかね、俺達の未来って」
「さぁ? でもなんだかんだでどうにかなってる気はするぜ」
そんな会話をしながら俺は準備を色々と済ませてしまう。
もう一度、もう逝ってしまったかもしれんが名乗っておこう、俺は大仏剣司、霊能力者だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます