キミのノゾム世界
キマユムイ
第1話そんなことってある?
「…てはいけない。」
「キミは一体…。」
おぼろげに見えるその人は、全く知らない人だった。
でもその人は絶対僕を知っていて、静かながらもしっかりとした口調で語りかけてくる。
「早く…早く…」
大事なことなのに途切れ途切れで聞こえない、僕はその知らない人に手を伸ばしかけた。
その時、おぼろげな視界に突然閃光が広がって、あまりの眩しさに僕は目を閉じてしまった。
「ちょっとまっ…あ、また夢か。」
そう、いつも同じ夢を見る。
誰かもわからないその人と、大事なのにつかみどころのないまま終わってしまう夢。
ただ、いつもとは違うことが一つだけあった。
「あ…れ…?」
一筋の涙が頬を伝った。
なんで泣いてしまったんだろう、それもわからない。
「まったく、なんなんだよ…。」
僕は涙を拭って、学校に向かう支度をしようとした…んだけど。
「どうしたの?」
柔らかい心地のいい匂いがしたと思ったら、いるはずのない誰かが僕の顔を覗き込んだ。
「え…?」
僕はまだ夢を見ているのか?
とりあえず、混乱しているので、二度寝をキメようと布団に潜り込もうとした。
「ちょっとまった。」
まるで、テーブルクロス引きのように、僕の愛しの掛け布団を軽やかにその誰かは引き剥がした。
「おい!ちょっと!何するんだよ!てか、いつもの夢と違うぞ?!」
「夢じゃないですしね。」
混乱している僕に、その誰かはニッコリと笑顔で返した。
不法侵入者…にしては爽やかすぎるしいい匂い…もとい誠実そうな20代前半くらいの男性がそこには立っていた。
髪は肩より長く、腰にかからないくらいの綺麗な青色の髪をゆるく後ろに束ねている。
メガネが実に賢そうだ。
細目だが綺麗な顔立ちで、同性の僕でもつい見惚れてしまった。
「いやいや、ちょっと待てください!誰なんですかあなた?!」
「え?私ですか?」
「あなた以外に誰がいるって言うんですか!」
しっかりしろと言う意味と夢じゃないことを確認するために、軽く両頬を叩く。
うん、痛い。
やはり夢ではないようだ。
普通ファンタジーとかそういった類の小説とかアニメでも、こんな急展開ないだろうに、現実にあったらこんなもんなのか?
とにかく、急な来訪者に戸惑いながらも、強盗やら犯罪の匂いはしないので、この信じられない現実に戸惑いながら、爽やかイケメンが口を開くのを待った。
「まあ、そんなことは後で話しましょ、寝てください。」
「え?」
「だから、寝てください。」
急な乱暴とも雑とも言えるお願いに、僕は聞き返した。
「いやいや、さっき布団剥いだじゃん!寝てってどう言うこと??」
「もー、わがまま言わないでください、あなたが寝てくれないと始まらないんですって。」
一体どう言うことなんだ、と言いかけた矢先、うなじのあたりに痛みを感じて、僕は意識を失った。
「せっかちでごめんなさい、ちょっと急ぎなもので。」
そう、推理物とか仲間を助ける時にやる首をトン!ってするやつ。
あれを僕は見事に食らったのだ。
一体誰かも、なんで寝なきゃいけないかもわからないまま、眠りへと強制的に誘われた。
ほんと、そんなことってある?
to be continued…
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