海の真ん中の落書き島
@nakamichiko
第1話 ノーベル賞受賞者の遺品
人間というのは地球を離れ宇宙時代になってもそう変わらないように思う。生まれて育って仕事をする、それの繰り返しを永遠に続けたため、確かに科学技術は目ざましい進歩を遂げた。
「銀河系を出るなんて出来っこない、更にその先の何万光年もある星になんて行けるはずがない」
それが可能になったとしても、相変わらず人は何かに悩んだり、永遠に答えの出にくい男と女の関係もある。完全な階級社会はなくなったと言っても、組織を作る上ではどうしても立場の強い人と弱い人が出て来る。そうして我々もどちらかと言うと後者に近いのだ。
此処は今の宇宙政府の中心から外れた所にある化学研究機関、しかもこれと言って成果が上がっていないために、どうしても弱い立場にある。
職場は珍しく男ばかりで、三十代後半の自分と四十代が二人、五十代も二人そしてほぼ新人の二十代も二人、そして一番偉い六十代の人が、あれこれと外の事をやってくれている。
「また、部長が遺品整理を引き受けてきたんだ」
「でも今度のは偉人らしいよ、えっとノーブル賞?だったっけ地球時代の最高峰の賞って」
「ノーベル賞ですよ」
「え? 」
皆は驚いた。無口を絵にかいたような、でもそんなに頓珍漢なことをするわけではない若い子が、初めて大きな声で言ったからだった。
「そうか、よく知っているね」
「でもどうして地球時代のノーベル賞受賞者の物がここにくるんですか? 」
「ああ、それこそ大人の事情だよ」
「君も先輩らしいことを言うようになったな」
僕の方が皮肉を交えて言われてしまった。
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