第35話 味方
「古川春斗です。1週間よろしくお願いします」
「よろしくね古川くん。とりあえず君は企画営業部のお手伝いをしてもらいます」
インターンシップでは僕の希望通り地域活性化に取り組んでいる部署に配属してもらえたよ
(人気の部署だったんでしょ?)
会社のウリにしてるプロジェクトだからね
プロジェクトリーダーは社長本人だし、たまに娘さんも手伝いにきてたよ
(かわいかった?)
そうだね。綺麗な娘さん達だったよ
(へぇ〜)
自分で聞いてきといてそれはどうなのさ
(そこはほら、あなた程じゃないよとかね?)
あなた程じゃないよ
(心がこもってないよね?)
言いがかりはやめようね
「古川くん、現場行こうか」
「現場、ですか?」
「いまうちで過疎化した街の再生プロジェクトに取り組んでるところがあるんだ。現状を見た方がわかりやすいだろ?」
すごく刺激を受けた
(現場に勝るものはなし?)
だね
「ただいま」
「お帰りはるくん。お仕事お疲れ様」
「なっちゃんもお疲れ様」
「ふふふ。夫婦みたいなやり取りだね」
「うれしそうだね」
「もちろん!あっ、お風呂にする?ごはんにする?それとも—、んっ」
「たまにはデザートからでもいいよね」
「……ごはん冷めちゃうので食後でお願いします」
「あれ〜?珍しいこと言うんだね」
「もうっ!はるくんが珍しいこと言うからでしょ!」
「なっちゃんは攻撃タイプだからね。守りが弱い」
「そんなこと……ある?」
「自覚ないんだね」
「うう〜、はるくんがいじめる〜」
「あははは。とりあえず着替えてくるね」
インターンシップも無事に終わり自分の将来も見えてきたよ
(行って良かったね)
そうだね
♢♢♢♢♢
「なつ〜」
「あっ、由季久しぶり」
「あんた、少し会わなかっただけなのにまた綺麗になったわね。プチ整形でもしたわけ?」
(してないからね?)
知ってる知ってる
「そんなことしないわよ。由季の方こそ随分と大人びてるわね」
「あらっ、私は元から綺麗なお姉さんで通ってるわよ?」
「はい?そんな評判聞いたことないけど」
「あんたが春斗くんとばかりイチャイチャしてるからよ」
(う〜ん、これは否定できないよね)
みんなの前ではしてないよね?
(……たぶんね?)
疑問形?
「仕事どう?いまは法務局にいるんだっけ?」
「そう、覚えることだらけよ。人権問題、相続問題、権利問題等々。窓口業務もこなさないといけないから営業スマイルも勉強中よ」
「それはバイトで覚えたんじゃないの?」
「あれじゃダメなのよ。相手は一般の人だけじゃなくって司法書士や土地家屋調査士とかの有資格者もいるわけじゃない?媚びすぎずかつ馬鹿にされないようにしないといけないの」
「はぁ〜、いろいろと頭使ってるのね。さすが由季ね」
「まあ、なつが春斗くんに向ける笑顔は万人向きじゃないから仕事ではやめときなさいよ」
「どういう意味よ〜」
「他の男を勘違いさせるってことよ。全く、なつは罪作りな女よね」
「誰にも迷惑かけてないわよ!」
気付いてないだけとか?
(魔性の女みたいに言わないでよ)
ほら、あなたは鈍感だから
(きみに言われたくないわよ)
「学生時代、何人になつを紹介してくれと頼まれたことやら」
「私だって由季を紹介してくれって頼まれたけど?」
「そう?私達って罪作りな女だったのね」
「何言ってるの、頭痛くなってきた」
「まあ、それはいいとしてね、あれから妹さんどう?」
「どうって言われてもね……、最近は父とも連絡取ってないからね」
「何かあったのね?」
「まあ、端的に言うと父は妹の味方ってことね」
「なるほど、実家に味方はいないって訳ね。いいわ、私がなつのママになってあげるから」
「そこは普通に味方でいいでしょ?」
「いいこいいこしてあげれないでしょ?」
「それははるくんにしてもらうわよ」
いくらでも
(じゃあ、はい)
よしよし
(えへへへ)
「ま、冗談はさておき、何かあったら連絡してね。できることはないかもしれないけど話くらいは聞くからね」
「ありがとうね。でも、実家のほうにも私達の味方はいるけどね」
♢♢♢♢♢
『兄さん?14時30分到着予定です』
「了解、昼飯は?」
『新幹線の中で食べるつもりですよ』
「じゃあ俺も食べてから行くか。新幹線口に迎えに行くから改札でたらまた連絡くれ」
『わかりました。運転気をつけてくださいね』
大学のオープンキャンパスと気の早い下宿先の下見に来た彼女は少し大人びて見えた
(女の子だからね。恋かな?)
う〜ん?なさそうだね
(わからないよ〜、恋に恋する年代よ)
実体験?
(……さあ?)
「兄さん」
「お疲れ様。夏希お姉ちゃんは?」
「仕事だよ。早く桜に会いたいから今日は急いで帰ってくるってさ」
「そう、なら先にスーパー寄ってくれる?晩ご飯は私が—」
「って言うかもしれないけど帰ったら一緒作ろうってなっちゃんからの伝言だ」
「でも仕事で疲れて帰ってくるんだから」
「一緒に作りたいんだよ」
料理の成長度は未知数だったからね
(その気になれば彼女なら大丈夫よ。彼氏なんてできたら凄腕料理人になるわよ)
「ただいま〜」
「お姉ちゃん!」
「桜ちゃ〜ん、いらっしゃい。元気だっ—」
「なっちゃんどうしたの?」
「はるくん大変よ!」
「何?」
「桜ちゃん恋してる!」
「えっ?し、してないよ?受験生だもん。恋なんてしてる暇ないよ!」
「なっちゃんの勘か」
「でも見てよ!こんなに綺麗になってるんだよ?絶対恋だよ!」
「してない!してないってば!お姉ちゃん自分が幸せだからって私まで恋愛脳にしないでよ〜!」
「え〜、まあ私が幸せなのは否定しないけどね」
「ちょっとなっちゃん。妹の前で抱きつかれるのは流石に恥ずかしいんだけど」
「幸せな姿見せつけようと思って。桜ちゃんも大学生になったらはるくんみたいな人捕まえてね!」
「兄さんみたい……、それはねぇ」
苦笑いだったよ
(おかしなことは言ってないよ?)
「ま、それはとりあえずいいとして。桜ちゃん、ご飯作ろうか?」
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