第12話 街を歩けば
「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末さまでした」
あなたは本気で全食用意したよね
(きみと一緒に食事するのが楽しみだったのよ)
「ねぇ、はるくん。平日バイトってどれくらいしてるの?」
す
「決まってないけど、4日間くらいかな?」
「私、週3日家庭教師のバイトしてるんだ。終わるのが20時なんだけど、それより早く終わることあるかな?」
「平日バイトがあるときは21時まで。なっちゃん毎日用意してくれなくていいよ」
「私は月水金だから火木ではるくんも休みだとありがたいね」
「調整はできるけど俺の分まで準備しなくても—」
「毎月おじいちゃんからお米やら野菜がいっぱい届いて1人では食べきれないんだ。だから申し訳ないんだけどはるくんにも消費してもらえると助かります」
(ダンボールいっぱいで持つのも一苦労なんだよ)
あなたは愛されてるからね
(きみからは?)
どう?
(質問返しはズルいよ)
「俺のことはほっといてくれていいから、サークルだってあるんでしょ?もっと有意義な学生生活を送ったら?」
あなたは人付き合いも上手だからね
(きみも昔はそうだったよ?)
昔?
(幼稚園の頃かな?)
なんか違うよね
「有意義かぁ、はるくんと一緒にごはん食べて、お出かけする。これって私にとっては十分有意義だよ?よって私の生活は今、充実してるのであります!」
変人だよね
(言い方!そうやって照れ隠ししないの)
照れてないよ
(聞く人によっては告白みたいだよね?)
聞く人によってはね
だから照れない
(むうっ!)
「迷惑?」
「……いまさらだし、その聞き方はずるいと思う」
「ふふふ、ずるいかぁ。小悪魔チックでかわいいイメージ?」
「あああああ〜?」
「そんなに考えこまないでくれる?冗談半分なんだから、そこまで考え込まれるとショックなんですけど」
あなたはかわいいよりも綺麗だから
(ふぇっ?)
「まあ、好きにしてよ」
「はい、言質取ったからね?」
有無を言わさないよね
(きみには私は暴君にでも見えるのかな?)
「言質でも人質でもどうぞ」
「じゃあ遠慮なく。ねぇ、片付け終わったら散歩に行かない?行動範囲はバイト先と大学くらいでしょ?」
「よくご存知で」
特に興味がなかったからね
(私とのお出掛けに期待してたんだよね?)
どうかな?
(返事は"はい"でしょ?)
はいはい
(もう、はいは1回でしょ)
「メンチカツのおいしいお肉屋さんがあるの。食べ歩きできるようにしてくれるんだよ。あとは最近流行のタピオカを売ってるワゴン車とか一時期ブームになったメロンパンのお店とかね。楽しみになってきたでしょ?」
「楽しそうなのはなっちゃんでしょ」
「バレたか、ちょっと待ってね。もう片付け終わるから」
♢♢♢♢♢
「へぇ、こっちにくることなかったから知らなかったけど、こんな近くに商店街があったんだね」
「夏にはお祭りもあるんだよ。去年は由季と浴衣着て行ったんだ。今年ははるくんとかき氷だね」
「雨宮先輩が拗ねるよ。この前も付き合い悪いって愚痴られてたじゃない」
「えっ?いつの間に会ったの?由季のやつ何も言ってなかったけど」
やきもちかな?
(嫉妬ね。きみはわたしのものなのよ)
知らなかったよ
(笑うところよ)
「大学でたまたま。挨拶代りみたいだった」
「由季ったら、どれだけ私のことを好きなのかしらね」
「さあね」
「もう!冷たいなぁ。いいわ、そんな冷たいはるくんにはお仕置きです」
(結構勇気出したんだよ?)
知ってるよ
顔真っ赤だったから
(知ってたの?ううぅ、恥ずかしい)
じゃあ手なんて繋がなければ良かったのに
「えっ?なんで?」
「なんでって、もう!はるくんが迷子にならないように決まってるじゃない」
「迷子はなっちゃんの得意技だよ」
「う、うるさいなぁ。そんな昔のことは忘れなさい」
昔のことは忘れたよ
(私とのことも?)
さあね
(いじわる)
「あ、本当に美味しい。ほんのりカレー味なんだね」
「そうなの。このメンチカツ欲しさに雨の中商店街にきたこともあるくらいなんだから」
「すげ〜食い意地」
「ちょっとはるくん?人聞き悪くない?」
「ほんと好きだよね。食べること」
「ぐっ、否定できない」
「でもね、 美味しいって思えるのは幸せなことだと思うんだ。心に余裕がなければそんなけと思えないしね」
「ああ」
「あっ!はるくん。そこの雑貨屋さん見たい!ここね、シャチグッズが豊富なんだ」
「え?看板に"イルカのお店"って書いてあるよ」
「何言ってるのはるくん。イルカとシャチの違いくらい……書いてあるね」
「シャチ見に行こうか」
「もう!はるくんの意地悪!バツとして今度本物のシャチ見に連れて行くからね!」
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