寮内着

「すみませんっ…つい訛が…」

「別に構わないよ。あたしたちもこっち来て方言とかすごく新鮮だし」

「あ、ありがとございやんすっ!」

牧は深々と月と望に頭を下げた。


「ところでこの“寮内着”って何かしら?」

「あたしも気になってた」

「寮って確か私服でもいいはずですよね?」

望が“寮内着”と書かれた袋を開けると、その中から出てきたのは、

「おおっ!?」

「これってまさか!?」

白いファーで仕立てられたウサ耳・兎の尻尾の付いたブルマ・タンクトップ・ブーツ・アームウォーマー・白色の網タイツ・オールスルーのストッキングの各パーツで構成された細かい衣装。

「まさに…っ!?」

「仮装大賞のエスコートガールの現バニーガールコスチューム!?」

「紛れもない本物だ!」

「でもなんでエスコートガールのバニーガールコスチュームが寮内着なんでしょう?」

「あれ?なんか紙が一枚入っていた」

寮内着=仮装大賞のエスコートガール衣装が入っていた袋にはさらに案内のプリントが入っており、月がそれを読み上げる。

「なになに…「寮内での生活と服装について、将来のバニーガールを育成する我が校の方針を鑑み、寮で過ごす時間もバニーガールである事を意識してもらうため、この独自の寮内着制度を導入しました。ただしこの寮内着の着用については各寮生の任意であり、私服での生活も許可します」と?」

「要するに、着たい人は着て、着たくない人は別の服で過ごしてもいいって事ね」

望が要約する。

「すごいですね寮内着制度…全国の寮のある学校どこを見てもなさそう…」

女子兎高等学校ウチだけが特殊なのよ。こんなに閉じられた世界だからできることで」

「なるほど!これで寮生活のために新調したパジャマも無駄にならずに済みました!」

「というわけで早速着替えてみましょう!」

「いいね!」

「はい!」

3人は寮内着の袋を開けてパーツをバラし、それぞれの私服を脱いで下着姿となった。

(うわぁ~温泉以外で他人の前で裸になるの初めてだよ~)

「ストッキングと網タイツも穿くとは言え、普通のバニーガールコスチュームと違ってショーツはそのままでゆったりできるからいいよな」

「全くね」

「?」

このやり取りの意味を後に牧は理解する事となる。

ストッキング→網タイツの順に穿き終えた3人はブルマ→タンクトップ→アームウォーマー→ブーツの順に着用していき、最後にウサ耳をそれぞれの頭に互いに付け合う。

「着れたー!」

3人は着付けが達成できた喜びから3年生用のベッドに思いっきり横たわる。

「本当に白くてモコモコだから…温かい…今の私たちにはありがたいよぉ…!」

「かわいいだけじゃなくて実用性高いんですね…」

「寒い岩手で暮らすには理になかった衣服だな…」

「学校に感謝…ですね…」

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