いつか出逢ったあなた 52nd

ヒカリ

第1話 「…んっ……」

 〇二階堂 泉


「…んっ……」


「あ…っ…‼︎」


「………っ…‼︎」


「…は……っ…あ……」


「…………は……あ…」


 バタッ。と…二人してベッドに倒れ込む。

 今日も…ハードだった…


 あたしは仕事が終わると、こうやって…この男と寝る。


 現場は毎日ある。

 危険だったり、危険じゃなかったり。

 二階堂は今までと何ら変わらず…仕事をしてる。


 …で。


 あたしは、自分の中に溜まりまくってる膿みたいな物を…

 こうして、セックスする事で出し切ってる。のかもしれない。


 完全には無くならないとしても。

 限界まで溜めてしまうよりはいい。



 先週、久しぶりにプライベートで華月に会った。

 その時…男事情を聞かれたあたしは。

 セフレがいる。って答えた。


 華月は少し驚いて、そして…すごく悲しそうな顔をした。


 …いや、違うなー…

 あれは…

 寂しそうな顔…?



「…何、用事でもあんの。」


 さっさと起き上がったあたしに、男は怠そうに声を掛ける。


「うん。ちょっと。」


「現場?」


「うん。」


「…なんだ…」


 あたしの答えに男は面倒そうに起き上がると。


「朝まで寝てられると思ったのに。」


 面白くなさそうにつぶやきながら、服を着始めた。



「頑張ってついて来て。」


「はいはい。じゃあね。」


 あたしの言葉に、手をヒラヒラさせて。

 男はあたしより先に部屋を出た。



 あたしは…アパートを借りてたけど。

 結局、二階堂のホテルに入り浸ってる。

 その方が何かと楽だから。


 で。

 男は…そこに堂々と入り込んでは、あたしを抱く。


 あたし達の関係は…セフレ。


 …いや…それ以前に。

 あたしは、あいつの…尾行対象。

 だから、今日もこれからあいつはずっとあたしをつけ回す。

 あたしは知らん顔して…尾行される。



 クローゼットからスーツを出して、今日着てたスーツをクリーニングボックスに突っ込む。

 来る日も来る日も同じスーツ。

 二階堂はみんな、そんなもん。




「お嬢さん、お休みになられても良かったのに。」


 本部に顔を出すと、富樫が眉毛を下げて言った。


「何それ。今日の現場、あたしのなんだけど。」


 コーヒーを飲みながら、視線だけ富樫に向ける。


「…午後の現場は私の持ち場でしたが…」


「あー、はいはい。ごめんね。」


 今日の午後、あたしは富樫の現場にちょっかいを出した。


 富樫は出来る奴。だと思う。

 だけど…

 あの一件以来…ちょっと元気がない。


 それは、富樫だけじゃなく。

 志麻もだし…兄貴だってそうだ。



 みんな仕事はソツなくこなしてるけど…

 なんて言うか…

 どこか、モヤッとしてるように思える。


 あたしはそれが気に入らない。


 そんなわけで…

 誰彼の現場にちょっかいを出しては、現場を横取りされて奮い立てばいいのにって思うのだけど。

 それはそれで、ますますあの一件を思い出してしまうのか…


「…私では力不足ですか…」


 みんな、ガックリ肩を落としてしまうのだった。



 あー!!

 もう!!


 しっかりしてよ――!!

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