【短編版】俺のツンデレ彼女が可愛い過ぎる件
小笠原 雪兎(ゆきと)
第1話 (教科書・クレープ) /改稿20200101
俺が罰ゲームで告白した相手はいつも俺にツンケンしていた女子だ。
少しぐらいデレとかテレがあったらツンデレとして受け入れられたんだけど…そうは感じられなかった。
セミロングのストレートヘア。サラサラで触ったら絶対に気持ちいい。
小顔でクールで格好いいと言う言葉も当てはまらなくもない。で結構美人。
この告白(偽)が実ることなんてないと思ってたから割り切って言った。
「好きです!付き合って下さい!」
そしたら…。
「…っ、わ、分かったっ…。今私フリーだし…仕方ないし…付き合ってあげる…」
そんなビッチみたいな返事の裏腹に、俺と同じく頭を深く頭を下げてきたんだ。そこで俺が『いや、罰ゲームです』とか言えるわけがなくて…今に至る。
(教科書・クレープ)
「…悠人、これもって」
「おう。分かった」
俺は渡されたそれをもって、彼女の横を歩く。一見荷物持ちにしか聞こえないし実際そうでもあるが、そうではないとも言える。
「今日は悠人がクレープ奢る日…」
「忘れてねぇって。何味が食べたいんだ?」
「…キウイがいい…」
「じゃあ俺は苺にするかな?」
校門を抜けて坂を上がる。俺が持っているのは教科書一冊。ここがミソ。俺が荷物持ちじゃないことは一目瞭然。
クレープだって奢られたから奢り返す、の構図になってどっちが先に奢ったかなんてうやむやになったことになっている。
まぁ俺はハッキリ覚えてるけどさ。
「悠人、荷物」
「ん?」
告白した翌日の終礼後、俺が教科書を仕舞っていると雪葉がその一冊を奪った。
「もってあげる」
「へ?」
そして勝手に教室を出た雪葉。
一瞬ぼけっとしてから、雪葉を追いかけてその横を歩く。
「いや、なんで持つん?そもそも持たなくていいって」
「もってあげる。だから持ってる…」
そしてさらに教科書を強く抱きかかえる雪葉。
いやそれ理由になってねーし…と言っても無理やり取り返すのも紳士じゃないしな…。
「にしても教科書一冊てどゆこと?」
「じゃ、じゃぁ…全部持つから…」
「いや、そういうことじゃなくてさ…」
結局、それ以外途切れ途切れにしか言葉を交わさない。そして帰路が分岐する大通りの交差点で返してくれた。
教科書が温かみに変な妄想をするのは男の性だ。
「明日ももってあげる」
「…あ、ありがとうな?で返答あってんのか?てか持たなくていいk…」
「じゃあね」
「あ、おう」
持たなくていい、といいつつも結局毎日毎日俺の教科書を、筆箱を、持ち続ける雪葉。
…そして付き合い始めて一週間、ようやく意味がわかった。
「なぁ雪葉。別に持つ必要ないからな?」
別に持ってくれなくても一緒に帰るけど。と、その後に続くはずの言葉を隠しながら教科書をいつものように抱きかかえる雪葉にそう言う。
それを何と勘違いしたのか悲しそうな顔をしてこちらを見上げる雪葉。
「やだ…もってあげるから…持ちたい…」
やっぱりこの子…俺に『一緒に帰ろ』と言うのが恥ずかしくて毎日毎日持ってくれてるみたいだ。
意外と…ツンデレ!?マジ!?
あ、いや、今取り乱すことじゃねぇな。まずは目をうるうるさせてる雪葉が大事だよな。
「じゃあさ、俺が持つよ」
「え?」
「いや、持ちたい。俺に、雪葉の教科書持たせてくれ」
「ぇ…。わわ、分かった…でも…今日は私が持つ…」
そう言って雪葉は赤い顔でぎゅっと教科書を抱きかかえる。俺が教科書になれたら…なんて思ってないったらない。
「クレープ奢る」
「…分かった。ありがとな」
付き合い始めて4週間目。坂を上ったところにあるクレープ屋の前で雪葉がそう言った。
女の子に奢らせるのは阻止せねばな。
ちょっと考えてからそう返答し、少し長めの列に入る。
「雪葉はどれにする?」
「…苺のSサイズ」
「おっけ~。じゃあ俺はキウイにするか」
さりげなく雪葉の注文を聞いて、財布に手をかけた。
「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ?」
「いち…」
「苺とキウイ1つずつ、Sサイズでお願いします」
雪葉を遮って、千円札を出しながら言うと、店員さんは少し困ったような顔を見せつつも、裏方にオーダーを伝えた。
「悠人、私がはら…」
「いいって、今回に関しては俺が払いたい。その代わり、来週、借りは返してくれよ?」
「っ…うん。わかった」
逡巡の後、嬉しそうにはにかむ雪葉。奢るとかじゃなくて『一緒に食べたい』って言えばいいのに。可愛いんだよなぁ…。
俺が『また来週一緒に食べような?』言えなかったはその言葉が思い浮かばなかっただけ。それだけだ。
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