いつか出逢ったあなた 51st

ヒカリ

第1話 「緊張してる?」

「緊張してる?」


「少し。」


「だよね。」


「でもワクワクしてる。」


「あたしも。」


 あたし達は顔を見合わせて、手をギュッと握り合った。


 会場からは、割れんばかりの歓声。

 今日の…このフェスは。

 高原夏希、最後の大イベント。

 日本とアメリカとイギリス…高原夏希が設立した三つの事務所から、出演を認められたアーティストだけが立てるステージ。


 なんてったって…目玉は…SHE'S-HE'S


 ずっとメディアに出なかったSHE'S-HE'Sが、春にはそのベールを脱ぐ。って言われてたのに。

 色々な事情で夏になった。

 …でも、夏になって良かった。

 おかげで、あたし達も間に合う事が出来たし。



「よし。出番だ。行け。」


「はい。」


 里中さんの声を受けて。

 あたしは…ステージに向かう。


 向かう先には、すでに詩生しおがいて。

 客席の視線を釘付けにしてる。


 だけど…

 詩生があたしを見て笑顔になると。

 客席があたしの姿を捉えた。

 大スクリーンにも、あたしが映し出される。


「…え…っ?」


「あれって…」


 客席だけじゃない。

 ステージの下手にいる人達からもざわめきが聞こえた。



「え…ええええ?あれって、モデルの華月ちゃんじゃない!?」


「えーっ!?ほんとだ!!」


「どうして!?」



 詩生がギターをかき鳴らして。

 曲が始まった。


『Thanks for coming!!』


『We are MOON SOUL!!』


 あたしは…歌い始めた。




 新しい夢に向かって。

 詩生と二人で。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る