歪な月
神崎真紅©️
イジメ
地味なハロウィンが終わったと思ったら、街並みはもうクリスマス色の三色に染まっていた。
まだ11月だし、異常気象のせいで連日日中は20℃という気温なのだから、あと二か月で今年も終わるなんて昨日の夢より現実味がなかった。
けれど、現実を突きつけられる様な事件が舞い込んでくるなんて、考えもしなかった今日。
娘の凛がぽつり、言った。
「ママ、凛学校でイジメられてる・・・・」
は?何その唐突なカミングアウトは?
「何があったの?」恐る恐る聞いてみた。
「みんなが凛を無視するの」
凛(りん)というのは、末っ子の次女で、上にお兄ちゃんとお姉ちゃんがいる。
今、中学3年生。
テレビのニュースでは使い古したボロ雑巾のようにイジメが原因で自殺した子の話題を垂れ流していた。
そう、つまりはテレビの中の話しだと思っていたのだ。イジメなんてものは。うちには関係ない話しだと。
ところが突然、舞台は反転して現実を突きつけられた。困惑、するのが当たり前。
取り合えず凛の話しを聞こうか。
「凛が教室に入るとシーンとするの。誰かに話しかけても凄く嫌そうな顔をして知らんぷりされる・・・・」
「友達の香織ちゃんは?」
「みんなと一緒にいる時は話してくれない、無視する。凛と仲良くすると、自分もみんなに無視されるようになっちゃうから、話しかけないでって言われた」
凛・・・・。
それは友達とは言わない。
既に凛の心は、正常な判断を見失ってる。
それじゃ学校に電話しますか。
おっと、その前にパパに言わなきゃ後でうるさい。
電話の向こう側で、凛のパパは何やら怒鳴り散らしてる。ちょっと、私に怒鳴らないでよ。
「分かった学校には俺が電話するから、お前は黙ってろ。ややこしくなるだけだからな」
あーあ、こりゃ大騒ぎだなぁ。
案の定、学校に電話して、凛をイジメてる奴ら全員呼び出せ。そう言って電話を切った。
それからすっ飛んで職員室に怒鳴りこんだ。
そうして校長以下教師全員集めて、凛をイジメてる奴を探して本人と親も呼び出せ、と言ったらしいけど。
学校側としたら、こんな狂犬病みたいな父親が乗り込んで来てる場面に、はい、この子がイジメの首謀者ですなんて言えるわけがない。命の保証がなくなる。
隠ぺい工作。
「お父さん落ち着いて下さい。調査しましたが、イジメの事実はありませんでした」
「はぁ?凛が嘘ついてるとでも言いたいのか?」
「いえ、ですから凛さんが嘘を言ってるわけじゃなく、本当にイジメはないんです」
こう言い切ったのは、学年主任の先生だった。
「先生がそこまで言うんだったら、今回だけは信じてやる。けど次はないからな」
でも、嘘のメッキはすぐに剥がれ落ちてしまう。
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