第13話 俺とアヤの関係性  雅樹視点

 最近悩んでいることがある。


 アヤのことだ。

 俺の召喚に巻き込まれた女の子だと思ったのだがもしかして違うのでは?

 先ほど、アヤの護衛をしてくれている騎士団のディランさんから魔力測定の時の話を聞いた。

 どうやら、アヤは女神の愛し子と聖霊姫という称号でさらに名付けの愛し子らしい。


 それがどんなに凄い事かをディランさんは熱く語ってくれた。要するにこの国になくてはならない存在と言うことだ。


「マサキ、アヤカ様には人を惹きつける能力もあるようだ。あの氷の貴公子と言われるオリゲール様がアヤカ様の前では満面の笑みで接していたからな」とディランさんに言われた。


 確かにアヤには不思議な力があるようだ。


 国王との謁見のときにそれは証明済みだ。

 それにあの愛らしい外見はこの国の女神様と似ていると言われている。


 謁見後の騎士団のみんなの反応はすごかった。


 俺にアヤを紹介してくれと入れ替わり立ち替わり付きまとってうっとうしいくらいだ。


 だいたいアヤの護衛の話が来たときにみんなは子供のお守りはイヤだと断ったはずだ。


 ディランさんだけが快く引き受けてくれたのだ。


 それをアヤの姿を見たとたん手のひらを返したように護衛に名乗りをあげるなんてそんな都合のいい話があるか!


 とにかく、俺のかわいいアヤに悪い虫が付かないようにガードしなければ。

 って、俺のアヤと自然に言ってしまえるほどにアヤに惹かれているのだろうか?

 いやいや、惹かれいるのとは違う、俺の場合はアヤの保護者としての責任があるからだ。


 そもそも保護者と言うのもどうなんだ?


 最初アヤは俺の召喚に巻き込まれた一般人だと思ったからとっさに従妹として紹介してしまったが、アヤもまたこの世界に喚ばれた重要人物だとしたら?


 アヤを守るためについた嘘がアヤの足枷にならないとは言い切れない。


 この国の人達を騙しているという罪悪感もある。

 それにアヤを巻き込んでしまったという自負がある。


 傷が浅いうちに俺達の事情を正直に話した方がいいのではないか?


 そんなことを悶々と考えているとダグラスから声をかけられた。


「マサキ様、素振りはそのくらいで良いみたいですよ。団長が模擬剣術に入れと言ってます」


 ハッとして周りを見た。ここは騎士団の訓練場だ。

 王宮の東側に広がった円形のグラウンドの片隅で俺は長剣を無心で振っていた。


「あ、悪い。考え事をしていて周りを見てなかったよ」


「考え事って、アヤカ様のことですか? わかります、お見合いの話がたくさん来てるそうですね」


「見合い?」

 いったい何のことだ?


「えっ、知らないんですか? 国王との謁見のあと、貴族や騎士団の実家から続々と釣書が王宮に届いてるっていう噂ですよ」


「なんだそれ?アヤはまだ8歳だぞ?」


「まあ、早いとは思いますが、貴族社会ではそんなに珍しいことではないですよ。この国の女性はだいたい、18歳から25歳で結婚、男性は20歳から35歳くらいですね。婚約者の選定は15歳前後ぐらいが一般的です」


「15歳が一般的ならやっぱり8歳は早いじゃないか。」


「いえ、考えてみて下さい。男性が15歳の場合、歳の差は7歳ですよ。十分射程圏内です。まあ、歳の差なんて問題にはならないですけどね」


 いやいや問題になるだろう。8歳の女の子と婚約関係になるなんて犯罪だよ。


 恐るべし異世界。


 見合いの話は片っ端から叩き潰してやる。



「マサキ様とアヤカ様も歳の差は10歳ですから許容範囲ですね。でも従姉妹だから婚約者というより、保護者の立場ですよね。そういう点では勇者様がライバルにならなくて安心です。実は僕の実家からも釣書を送ったらしいです」


 なに?!


 ダグラスのその言葉で即座に俺はアヤと相談して国王と宰相に本当のことを話そうと思った。


 自分の一存で嘘を付いていたこと、その件に関してアヤは何も悪くないことを説明して誠心誠意謝ろう。



 そう決心をするとさっきのモヤモヤした気持ちが晴れていった。


「ダグラス、模擬剣術の相手をしてくれ」


 まずは目の前の少年に俺は見合いなど認めないと体に解らせてあげよう。

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