死虫

卯月レン

第1話

僕には人には見えない虫が見える。

あの虫が見えたら、死人が出る。

病死、事故死、自殺いろいろだ・・・。


最初は僕が小さいときに見えた。

それは父の死だ。

「お父さんに虫がついてるよ」

父の腕に醜い虫がついている。

「どこだ?どこにもついてないじゃないか」

父と手を繋ぐのが怖かった。

その虫がいつ、僕のところに来るかわからないからだ。

「じゃあ伸、行こうか」

僕の手を引き、前に進む。

信号が青になるまで待っていると、ものすごい音がした。

信号を無視した車はブレーキ音とともに僕の方へ向かってきた。

「伸、危ない!」

父が僕をかばう。

ガシャンっという音で目を開ける。

父は僕の代わりに車に轢かれた。

「お父さん!」

父は即死だった。


ー15年後ー

僕は大学生になった。

あれから、ずっと虫が見えている。

その虫を「死虫」と呼んでいる。







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