『はとさぶろのさんぽ』

やましん(テンパー)

『はとさぶろのさんぽ』

{これは、散歩とやましんの病気以外は、すべて、フィクションです。この世には、まったく関係ありません。}


 やましんは、ゴミステーションで、お世話になったゴミさんたちに別れを告げたあと、珍しく早朝から、近所のコンビニさんに無糖の紅茶ぱっくを歩いて買いに行きました。


 食べてはならない、ポテちっぷすも内緒で買い込み、少しだけ田んぼが残る裏通りを回って帰ろうと、足取りも怪しく歩いておりました。


 なんせ、ここんとこ、自律神経失調症とかで、体が勝手に右に左に揺れるので、お散歩さえも、楽じゃない。


 車が、ぶんぶん走り回る表通りは、もう、危なくて仕方がないのです。


 で、昔懐かしい、短いあぜみちに入りました。


 すると、やましんの前を、さらに、よたよたと歩いている、鳩さんに出会いました。


 後ろ姿がなんとなく虚ろで、やましんが背後に迫っているのに、飛び立とうともしないのです。


『はあ…………まてまて、こいつは、見たことある鳩さんに違いないな。あー、きみきみ、どうしたの?』


 やましんは、鳩さんに呼びかけました。


『はあ…………? おやおや、これはやましんさん。お散歩ですか?』


『まあね。君は、先日らい、やましんを監視さしてた、鳩さんだね。どしたの?なんか、ふらふら状態ですよね。』


 鳩さんは、首を前後に振りながら言いました。

 

『はい。ふしょう、はとさぶろは、やましんさんの監視に失敗し、リストラされました。』


『はあ…………それは、まあ、お気の毒な。やましんも半分は退職勧告された感じだからな。でも、君たちは、お空を飛べるじゃないか。電車賃も、ガソリン代もなしに遠くに行けるじゃないの。鳩さんは、平和と自由の象徴だよ。』


『それは、人様が勝手に考えたことです。はとさぶろは、行き場がなくなりました。えさばに近付くと、もと仲間に妨害されます。中央鳩政府の監視対象なので、新たな職場も得られない。はと八分です。もはや、この世には、居られません。』


『まあまあ、思い詰めないで、やましんのお庭にいていいよ。食材は提供しましょう。時々、忘れるかもしれないけど。』


『やましんさん。ありがとう。考えてみます。あ、やましんさんは、まだ、裏政府の監視対象ですから、気をつけてください。』


 はとさぶろは、そう言うと、なんだか、相当危なっかしく、よたよたと、飛び去りました。


 まあ、いつも監視されてるようにやましんが感じるのは、普通だからな。


 これだけ、町中、テレビカメラだらけなんだから。監視なんかしてないと言う方が、むしろ、どうかしてます。


 それに、はとさぶろに言われるまでもなく、鳩さんやカラスさんたちが、10メーターおきにはいて、やましんを監視してますから。


 気にしても、仕方がないさ。


 やましんは、お散歩を続けましたが、なんだか、道を間違えたりして行き止まりになったり、やたらと、てこずったのでありました。


 やと、おうちに帰りつくと、ニュースがありました。


 政府は、国民全員に、GPS保護管理システムを、導入する方針を固めたとか。


 紅茶で、ひとりぼっちの乾杯をいたしました。



・・・・・・・・・・・・ 📸 


              おしまい

 


 


 

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『はとさぶろのさんぽ』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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