第56話目 交流38 MASATO
あっ、あったあった。
仕事帰りにスーパーに立ち寄った直人は、野菜コーナーでまずそのまま食べられるサラダ用のカット野菜を2袋かごに入れると、今日の一番の目的である乾麺コーナーに向かった。そこに並ぶ袋麺の中から、〇△ラーメンを見つけると、『AIさんはこれが好きなんだな』と、バラ売りではなく、5つ入りでひと袋になっている方をカゴに入れた。最近では家でラーメンを食べるときはカップ麺ばかりだった自分が、5つも入った大袋のラーメンを買うとは、なんだか可笑しい。
『あっ』と思い、野菜コーナーに戻ると、白ネギを一本カゴに入れた。野菜不足は気になっていたので、そのまま食べられるサラダだけではなく、どうせ作るならばと、せめてネギくらいは入れようと思ったのだ。そう考えると、チャーシューやコーン、煮卵もあったら入れようと思い、自分にしては珍しく、カゴの中にはいくつかの具材が入ることになり、カップ麺や総菜、弁当ばかりを買っていた自分と何か違う、少しだけちゃんとした自分というものをそこに感じ、AIのおかげで人間らしくなったような気がした。
その後、六缶パックのビールと、六個入りの朝用のロールパンとヨーグルトを三つほどカゴに入れた。
部屋に帰りつくと、まずパソコンを立ち上げた。ブログをチェックするためだ。外でもスマホでチェックは出来るものの、パソコン画面に慣れている直人にとってっは、やはりパソコンの方がやりやすい。
AIからの書き込みがないことを確認すると、ラーメンを作り始めた。
湯を沸かせている間に刻んだネギと、パックから出して乗せただけのチャーシューと、缶詰のコーンを乗せ、半分に切った煮卵を乗せると、なんとなくそれらしいラーメンが出来上がり、AIさんに見せようかなと、スマホで写真を撮った。
まず冷えたビールで喉を潤したあと、ラーメンをすすると、「うまっ」これはなんとしたことか、実家でも子供の頃から何度も食べたことのあった〇△ラーメンは、記憶にあった味以上に美味しく感じ、『なんで今まで食べなかったんだ!』と、後悔めいたことさえ感じた。
今夜もラーメン
昨日、仕事帰りにラーメン食べましたが、
今日もまた、ラーメンが食べたくなり自分で作ってみました。
作ったとはいっても、袋麺なんですけどね(笑)
一応それらしく、チャーシューや卵も乗せてみました。
今までも何度かこのラーメンを食べたことがあったんですが
今夜自分で作ったこのラーメンが、一番美味しく感じました。
何度も作ってくれていた母上様、ごめんなさい(笑)
キンキンに冷えたビールと共に、今夜の夕食終了(笑)
緊張の初日を終え、緊張の糸が解れたからか、
今夜のビールは身体に染み渡ったようで、1本なのにいい気分です(笑)
スマホで撮った写真を取り込んで、多少小さく加工してUPした。
「美味しそうに見えるかな?」
盛り付けも一応見栄えがいいようにしてみたつもりだ。AIさん、どんな反応してくれるかな。AIさんが好きな〇△ラーメンだってこと、気付いてくれるかな?
AIさん、パソコンの前にいるかな……
直人は先程は変化のなかったAIのブログを再び訪問し、そこにAIの姿をひとかけらでも見つけられないものかと、昨夜の記事を、AIの言葉を拾うために昨夜のやり取りを表示した。すると、自分たちのやり取りの一番下、そこにAIのゲスト、ネコさんの書き込みを見つけた。
『AIさん、マドレーヌとても美味しそうですね。作ってみたいので、今度レシピ教えてください。それと……AIさんの独り言(?)……なわけないですね、それを目にして、なんだかラーメンが食べたくなってしまいました(笑)』
「あっちゃー……そうか、そうだよな。自分にはやり取りがちゃんと見えているけど、傍から見たら自分の入れたコメントは内緒だから、AIさんのコメントだけが表示されてて、まるで独り言のように見えてしまってるんだな……」
直人は一度ログアウトし、その状態でAIのブログを表示した。すると、ネコさんが書いていたように、AIさんがSUNさんとりょうさんへ書いた返事以外は、まるで独り言のようではないか。しかもその独り言で、ラーメンの話をしているのだから、それは記事の内容とはまるきり違うものだし、これはなんとしたことか、他のゲストが目にしたら、もしかしたらいい気持ちがしない人もいるかもしれない。
直人は急いでログインし、AIのゲストページを開いた。
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