第45話目 交流27

 MASATOが読んでしまったかどうかわからないけれど、愛美はMASATOの昼休みが終わると思われる頃まで、自分のゲストページを開いたまま、F5キーを幾度となく押し、画面に変化がないかチェックしていた。


 そして、その時間には書き込みはされなかった。


 だからといって、MASATOが書き込みを見たのかどうかは、本当のところはわからない。もし目にしていたとしたら、すぐに削除されたことにも気づいただろう。その場合、何故そんなことをするのかと、不思議に、不快に思われるかもしれない。


 愛美は考えた。


 夕方、MASATOが書き込んでくれたゲストページに返事を書こう。その時には、昼にコメントを残そうとしたけれど、時間がない中、慌てて書いてしまったので、夕方落ち着いて書こうと思い、一度削除したことを正直に書く。そしてそこには、昼にコメントを残せるほど時間はないと思わせられるように、時間がないという言葉を入れようと思っていた。


 その後、いつものように他のゲストたちのブログを回ろうとし、履歴を残さないため一度ログアウトしてゲストのブログを全部開き、またログインして、夜になったら書き込むため、自分の下書きにコメントを書いた。



 母が帰宅し、愛美が短くした髪のことでひとしきり驚いた後、似合う可愛いい大人っぽい等、美菜のさっぱりした髪のことも含め3人でお喋りし、18時を過ぎた頃、そろそろ大丈夫かなと、愛美は部屋へ上がるとパソコンをつけ、考えていたコメントを投稿した。


 『MASATOさん、こんにちは。今朝は書き込みをくださって、ありがとうございました。急いでいたので書き込みに気付かなくってごめんなさい。お昼休みにも一度ここをのぞいて書き込みを見つけて、嬉しくてお返事書こうと思って書いたんですけど、慌てて書いてしまったので上手くまとまらず、やはり落ち着いてと思い、今、書き直しています(笑)私のほうこそ、昨夜はたくさんお話しできて嬉しかったです。MASATOさんのこと、たくさん知ることができてよかったです。記事も楽しみにしていますね』 


 これでいい。


 これだったら、もし万が一にもMASATOが昼の書き込みを見ていたとしても、消されたことに気付いていたとしても変に思われることはないだろう。


 投稿した後、いつもならパソコンをいったん消すのだが、またすぐに開くのだからと、画面だけ消して下に下りた。食事が終わる頃には、もしかしたらMASATOから書き込みがあるかもしれない。そしてその考えは的中した。


 食事のあと、「先にお風呂入っていい?」と父に声を掛けた。


 我が家では、子供の頃から基本的にはお風呂は父が一番だったが、愛美が中学生になった頃から、父は「先に入ってもいいぞ」と言うようになった。どうやら職場で同僚から思春期の娘を持つ父の対応らしきもののレクチャーを受けたようで、年頃の娘は父親の洗濯物と一緒に洗濯されるのも嫌うとか、できれば父親より先に風呂に入りたがるとか、どうやらそんなことを聞かされ、娘に嫌われないようにと釘を刺されたらしい。


 そんな父に母が、「そんなんじゃ父としての威厳がなくなるでしょ!」などと言っていたが、実のところ、娘たちの風呂の時間を気にしながらさっさと入るということも苦だったようだ。逆に娘たちにさっさと入ってもらい、自分は時間を気にせずゆっくりと風呂に浸かっていたいらしい。


 愛美は食後、入浴のための身支度をしに部屋に戻ると、まずブログをチェックした。


 すると、先程コメントを入れて時間をおかずにMASATOからの返事が入っていた。


 『AIさん、こんばんは。今、帰ってきたところです。朝、ブログを覗いたらAIさんの履歴を見つけて、嬉しくてつい書き込んでしまいましたが、自分も仕事に行く時間が迫っていたので、書き込んですぐに消していたので、返事は気にしないでください。昼も、ブログ開ける時間がなかったので、今、読んでAIさんが気にしてくださっていたことを知り、なんかちょっと嬉しかったんです』


 その返事からは既に30分以上が経っていた。


 愛美は焦りを覚えた。


 MASATOはまだ画面の向こうにいるだろうか?AIから返事が入らないことで、画面を離れてしまったのではないか?これだけ時間が経っていたら、もうAIが画面の向こうにいないのではと思っているのではないか……


 とりあえず、お風呂の前に一つ返事を入れよう。そして急いでお風呂に入ろう。時間も時間だし、MASATOも食事をしている場合がある。きっと、今画面の向こうにいなくても、きっとまたチェックするはずだ。


 『MASATOさん、こんばんは。お仕事お疲れ様です。私もお昼にちょっとだけ時間があったのでブログを覗いてみたんですが、MASATOさんからの書き込みを見つけて嬉しかったですよ。私も、朝も昼もやはり忙しくて覗くだけしかできないので、お互いゆっくりブログができるのは夜くらいなものですね(笑)』


 それだけ書き込んでブログを消し、画面をトップに戻して、急いでお風呂に向かった。



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