敵わない

n.

第1話

敵わないのは kwkm



"21時のニュースをお知らせします。"



「遅いねんけど何しとん…」



彼女とのトーク画面を開いても未読のまま。



"帰り何時?"

"今どこなん?"

"まだ飲んでんのか?"

"2次会行ったんか?"



嫌われるのでは、なんて思考は俺にはなくて。

赴くままにメッセージを送る。

気付けば30件。


____________________________________



今日は互いに休日。何も予定が無い。だが、彼女が何か嬉しそうに身支度をしている。



「今日どこか行くの?」

『中学の同窓会〜!久しぶりに顔出そうと思って!』

「へ〜」



何それ。聞いてない。まあいい。



「準備終わったら教えて」

『へ?…あ、うん、』


『準備終わったよ』

「…そんな胸元開いたワンピースで行くの?」

『そんなに開いてないじゃん』

「開きすぎだよアホ」



そう言って彼女を引き寄せ、誰でもわかるような場所に俺のもの、なんて印をつける。



『ちょっと…!』

「何」

『こんなとこ、、』

「酒入ったら何されるかわからんもん」

『大丈夫だってば』

「そう言って今まで介抱無しで帰ってこれたことあったんか」

『…それは』

「まあ何かあれば迎え行くから」

『ありがとう』

「帰り何時?」

『9時ぐらいじゃない?』

「2次会行かんといて」

『はいはいわかってるって』



いってきまーす、と言って俺があげた香水のいい匂いを玄関に残して、彼女は家を出た。ちゃんと俺があげたやつ付けててやっぱかわええなぁ。おっと、自分はオフィスに用があったんだった。向かわねば。




伊「あれ、川上どうしたの?」

「ちょっと急ぎのものがあって」

伊「記事なら明日でもいいのに」

「頼まれてる校閲をサボるわけには」

伊「はは、無理すんなよ」

「ありがとうございます」



頼まれてる校閲、なんてのは嘘で。彼女がいない間、家でソワソワしてるのが何となく嫌で無理矢理仕事モードにした。次の記事、どんなのがいいかなぁなんて考えながら。


すると伊沢さんがココアを淹れてくれた。



「たまには気が効くんですね」

伊「本来逆なんだけどね」

「ココアありがとうございます」

伊「ソワソワしてるのが丸見えだったもんで」

「ばれてましたか」

伊「さては彼女さんが出かけてるんだな」

「伊沢さんには敵わないです」

伊「過保護な川上面白いね」

「やめてください」

伊「こんな姿こうちゃん見たら多分笑う」

「煽られるのは勘弁です」



伊沢さんと談笑してたら時計は20:30を指していた。そろそろ家に帰って彼女を待つとするか。



「お疲れ様です、先上がります」

伊「彼女さんと素敵な夜を〜〜」

「伊沢さん」

伊「ははっ、お疲れ〜」



弄ってくる伊沢さんをオフィスに残し、帰路へ向かう。

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