ギミック

街を出ると、見たことがある景色。いざ魔王城へ、さあ冒険の旅へ。あの時と同じ景色だ。あの時よりは、もっと緑が生い茂っている。暑さからしても、夏手前なのだろうか。


「こっちだよ。森の中のほうなの」


平原を突き進み、ただ森へ歩いていく。るんるん、と鼻歌を歌いながら、ザカリーはユカと話している。


「そういえば、魔物が少ないですね」

「そうだな。100年くらい前はたしか…、魔王がいたはずだ。けど、まだそんなに活発に活動していないんだろう」

「ふーん…、あ、スライムだ」


めのまえに スライムが あらわれた!

先頭をきるザカリーの目の前に、スライムが飛び出してきた。形は整っておらず、顔もないのに動いている様は、想像のスライム以上に気持ちが悪い。


「スライムは剣で切ってもなかなか死なないんだ」


リュカが前に出て、剣を抜く。そして、うごめくスライムを両断。だが、すぐ元にもどってしまう。


「へー」

「いやへー、じゃなくて……。つまり、ここは魔法が有効なんだ」

「ああ、なるほど」


戻っていくスライムがちょっとかわいく思えて、ウキウキしてしまった。


「そうそう、私もね、いつも襲われたら燃やしちゃうよ!」


ひょこ、とザカリーがリュカの後ろにはりついて、横から顔を出す。


「燃やすって…、どうやって。」

「こうだよ、ただ念じればいいだけだよ、お姉ちゃん」


ザカリーはスライムの方に手を当てる。

またたく間に、あたりは明るくなる。まだ昼間にもなってないが、太陽は出きっている。それなのに、更に。手から出て、火力も凄まじく、あっという間にスライムは粉々になってしまった。


「へ~!やるじゃん」

「お前…、氷属性じゃないのか」


一番驚いたのはリュカだった。私の薄い反応とは真逆に、驚いて…より、不思議そうに、焦って、といった方が正しいのかもしれない。


「ぞくせいって、何?」


ザカリーは、笑って、あどけない顔でリュカを見る。そんなに彼女のしたことが、すごかったのか?と、聞こうとしたところ、


「ねえねえ!もっと出てくるよ、スライム!!」


ユカが叫んで周りを見渡した。バカにしては、少し焦っているな。

いや、私も焦った。いつの間にか、ものすごい量のスライムに囲まれていた。

明らかにぬめぬめして、べとべとして、どろどろして、ぬちょぬちょ言ってる生物がたくさん近づいてきている。

こりゃひと悶着ありましたな。

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