廃墟
剥がれかけたカレンダー
日付は数十年前のもの
この日 ここでなにがあったのか
ホコリの積もった家族写真
みんな幸せそうに笑っているのに
どうしてここに置き去りになっているの
床に散らばった たくさんの紙の束
腐りかけの柱 ころがった片方の靴
干しっぱなしの洋服
悲しそうにこちらを見る ぬいぐるみ
破れたカーテンから差し込む光は
ゆらり ゆらいで きっと
あの頃となにも変わらないだろうに
ここに流れていたであろう日常は
もう どこにもない
いくつかの表彰状と いくつかの遺影
ぎっしり 写真の詰まったアルバム
写った人々はどこへ行ったの
草木に侵食される台所
冷たい風に晒される風呂場
生き物のフンと死骸が転がる廊下
建物も思い出も全部なにもかも
自然はすべて無に返そうとする
そうやって 私たちの生きた時間も証も
時の流れに飲み込まれて
跡形もなく消える
私が存在したことなんて
私が消えて10年も経たず 忘れられる
私がいた この場所は
「誰がいたんだろう」
それで おわり
ここにいる私が 私である必要はあったんだろうか
無数の人間のうちのひとり
なんの特別でもない私は
どんなに今声をはりあげても
誰にも気づかれないまま
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