ドルチェ

作られた豪勢なドルチェを

お店まで運ぶのが父の仕事だった


たまに商品にならなくなったものを

子供だった私に持ち帰ってきた


でも

あの頃から本能的に生きるのを拒否した私は

そんなご馳走すらも必要としなかった


おばさんたちは喜んだ

「この子はどんな贅沢もしない良い子なのね!」

「まあ!こんな良いものを拒否するなんて、贅沢な子よ!」


褒めるのも 貶すのも

楽しそうな おばさんたち


父は、つまらなそうだった


大人の顔色を窺って育つ子供が

健全なはずが ないでしょう


今更どんなにドルチェが美味しく感じようと

子供のころの傷は癒えないのよ

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