友達≠親友

八月

第1話

規則正しいアラームの音で私は目が覚めた。頭の上に置いある白い目覚まし時計のアラームを切り、ゆっくりと体を起こす。時刻は七時三十分。締め切ったカーテンから眩しい光が漏れている。私は大きく背伸びをしてからよいしょと起き上がり、カーテンを開け、ついでに窓も開けた。外は晴れ渡っているが、風はまだ冷たく、毛布が手放せない。四月も半ばであるため日中は暖かく過ごしやすいが、朝はまだまだ寒い。冷たい風にぶるりと体を震わせてそうそうに窓を閉めた。私は窓から離れて机の引き出しから体温計を取り出し、スイッチを入れて脇にはさんだ。朝起きて体温を測るのは私の日課である。ピピッと音がして取り出して見るとぴったり三十六度。熱もなく体の調子はすこぶる良い。外も晴れているし、今日は絶好の、引きこもり日和だ。

私は体温計を引き出しの中に戻し、再びベットの中に潜り込んだ。と同時に階段を上がってくる音がしてすぐに部屋の扉がノックされた。

「美希ー。今日も学校に行かないの?」

「行かない」

お母さんからの呼びかけに布団の中に入ったまま答える。

「今日は月曜日だし、外も晴れてるのよ。もし、体調が悪くないんだったら学校に行ったほうが」

「ごめんお母さん。今、熱測ったら三十八度あったの。頭も痛いし体もだるいから今日も学校休むわ」

全部嘘だったが、私は速くお母さんに出ていって欲しくてわざと元気のない声を出した。

「具合悪いの?それだったら、病院へ行きましょうか?」

「いい。寝てれば治るから放っておいて」

「でも」

「いいから速く向こうへ行って」

お母さんを追い立てるように言うと、何かあったら言ってねと残してからお母さんは階段を降りていった。

お母さんが階段を降りたのを確認してから、私はベットから出て、机の上に開きっぱなしになっているパソコンの電源を入れた。さっきお母さんも言ったが今日は月曜日。今年中学二年生になった私、多村美希は本来なら制服を着て、朝ご飯を食べて学校へ行くこの時間を大抵はベットの上か、パソコンでゲームをやる時間としていた。この生活をもう半年ほど続けている。もちろん学校へは行っていない。外からは登校中の子どもたちのはしゃいだ声が聞こえる。子どもというのは朝から晩まで元気だ。どこからそんな元気が出てくるのか不思議でならない。私は開けたままだったカーテンを締めようと、椅子から立ち上がった。カーテン閉める前に窓は開けずに少しだけ下を見てみた。私の家は二階建てで私の部屋はちょうど下にある歩道が見下ろせる場所にある。歩道では、色とりどりのランドセルを揺らして小学生たちがが楽しそうに歩いている。小学生以外にも犬の散歩をしている人、ジョギングをしている夫婦など、様々な人が歩道を歩いてまたは走っていく。私はその中に見知った顔を見つけた。友達と三人で歩いているその子は小さく笑って何か話している。三人は上から見ている私に気づかずそのまま通り過ぎていった。通り過ぎる直前にその子が一瞬上を向いた気がしたが目があう前に私はカーテンを閉めた。多分目は合っていないと思う。いや、合っていない。

私はふぅと息をついてから再びパソコンの画面に向かった。

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友達≠親友 八月 @12110811

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