文学の女神様が私の作品にケチをつけて困ってます

傘井

第1話お姫様抱っこする神様

創作とは人の人生を変えるものだと私は思っている。だから私がこの部活に入って青春を謳歌するのは必然だったのであろう。

 帰り道

 四月私、橋丸えりつは長谷川高校に入学した。

周りは高校生活に期待を膨らまして気分を高揚しているものがほとんどであったが私は、冷静でいた。なぜならいくら期待をしようと創作のような青春を過ごすことはできないと高を括っていたからだ。

矢崎天音「えりつあんた今日も冷静ね。もっと新生活に胸おどりなさいよ」

橋丸えりつ「そんなこといたってこれから待ってるのは唯の現実でしょう」

 そう言い終わると小学生の頃からの幼馴染である天音は私の胸を鷲掴みにしてきた。

矢崎天音「どうこの意外な展開。あんたも胸高ぶるんじゃないの」

橋丸えりつ「中学生の頃からのあなたの定番に今更たかぶってどうする」

 それに学校関係ないじゃんと付け加えて返すと天音は私の胸を握りながらムスッとした顔をした。

矢崎天音「そう言えば唐突なんなけど、えりつは何の部活に入る」

橋丸えりつ「入らないよ」

笹原天音「えっなんでよ。私と同じ演劇部に入るって月夜の元約束したじゃない」

橋丸えりつ「そんなのした思い出ないよ。てか何がしたいとかないし帰宅部になって原稿書いた方がいいかなって」

矢崎天音「えー何よ原稿たって官能小説じゃない何が楽しいのよ。」

矢崎天音「何が楽しいかじっくり話そうか一晩かけて」

 天音は両手を振りながらあんたの官能話は本当にながいから無理無理といって昨日みた百合丘という映画の話に話題を変えた。

 

 私は学校から帰宅し夕食を終え風呂に入りニルヴァーナと描かれた寝間着Tシャツとシンプルなジャージに着替えると、自室で官能小説を書き始めた。 

 今書いている話は異世界からやって来た世間知らずのお姫様と、ホームレスの男が全国のネットカフェを周りながら性交に励むというものだ。私は時計の針を気にせずにパソコンでカタカタとこの姫様とホームレスの話を紡いでいった。

 しかし二人が広島のネットカフェでヤクザ映画を見た影響で行為に行う直前で手が止まってしまった。いやある事に気づいてしまったのである。私は全くいっていい程にこの異世界からやって来た姫様に感情移入できてない事に。

 いつもなら描いている内にヒロインと自分を重ね合わせ本能的な興奮を覚えて筆が乗る物なのだが全くそれが来ない。今までも少なからずヒロインに感情を重ね合すことできず何時間も椅子の上でパソコンを睨め付けていたこともあるが、大抵一日二日たてば段々ヒロインのキャラが掴めてきて興奮してきたのだが、今回は何日間キーボードを叩こうと衝動のような物は訪れる事は無かった。

 集中力がなくなり部屋の本棚に目をやると異世界物のタイトルが一つもないことに気付く。

橋丸えりつ「あれはなんだったんだろう」

 1人言が小奇麗な部屋に虚無に消えて、静寂と眠気がやってきて私は納得しない顔で床に就いた。

 朝まだひんやりとする空気と共に通学していると、その空気を跳ね返すが如く後ろから、猛スピードで手提げカバンをバタバタさせ天音がやって来た。

笹原天音「えりつおはよう。今日もかわいいぞわれ」

橋丸えりつ「ありがとう。あなたもかわいいわ」

 10年続く挨拶を10年懸けて完成させた定型詞で返すと天音は頬を赤くさせて私の肩の辺りを叩いて

矢崎天音「100点今日も100点だよえりつ」

 九九点以下だとドロップキックなのだから毎日ちゃんとやっていますよと思考中に、信号は赤になって私達は足を止めた。静寂が始まる訳はなく天音の口は動き出した

矢崎天音「そういえばえりつお告げはどうなったの」

 何故かカッコいい僧侶をイメージしてか両手を合わせ首を少し曲げながら矢崎は意味ありげに聞いてきた

橋丸えりつ「別に特になにも」

矢崎天音「えっなにも起きなかったの。私的にはえりつが世界の救世主になる伏線だと思っていたのに」

 橋丸えりつ「そんな大層なことじゃないよ」

 矢崎は手をバタバタさせながら私が救世主でいてほしいよ駄々をこねをはじめた。それを少し軽蔑した目で見ていると信号は緑になり会話の内容もおもしろそうな先輩がいたという矢崎の話に変わって私達は歩き出した。

 

 先日私は変な夢を見た。その話をすると矢崎は小説の神様のお告げではないかと言ってきた。私は夢にでてきた人物を思い出しながら小説の神というより筋肉の神様ではなかろうかと結論を出した。


 私が起き上がると周りに草原が広がっていて私の前にはボクシングパンツしか履いてない筋肉隆々のクロネチア人と思われる坊主男が立っていた。

神様「よく来た選ばれし民よ」

 男はその体に似つかわない程に冷静な口調で私に喋りかけてきた。

 橋丸えりつ「ああ・・どうも」

 坊主男の身体に威圧されながらも、荒唐無稽すぎるシュチュエーションに夢だとすぐさま理解した私はどうにか返事ができた。

 神様「えりつ、君ここウトーピヤにきてもらったのは少し頼み事があるからなんだ」

 坊主男がそういうとまるで旅の始まりの合図かのように気持ちいい程の風が草原を駆け抜けた。風が吹き終わると話途中の男も

神様「いい風だ。君の新しい旅立ちを祝しているのだ」

 と淡々と言ってきたので私が思った風の演出の意図はあたっていたようだった。そうすると私はその事がおかしくて大きく笑った。

神様「どうしたえりつまだ話は途中だぞ」

 橋丸えりつ「いや私が作った世界にしてはありきたりすぎるかなって」

坊主男は首をかしげたが、自分が作った創作物に遠慮する事はなく私は喋りを続けた

 橋丸えりつ「いやーだってこの今の状況王道の異世界物の導入じゃないですか。わたしは多分この数分前にしんだりしててあなた、まあ・・俗にいう神様が手違いで殺してしまったから、その代わりに異世界で第二の人生を送れるように話を持ち掛ける訳です」

 坊主男は特に顔色一つ変えずに私の話を聞きつづけていた。

橋丸えりつ「それで神様、私はこれから何に転生してハーレムを形成するんですかね。ありきたりなのは読者はあきてしまうだろうし阿修羅像とかどうですかねきっとみんな夢中になってよみますよ」

 言いたい事を言い切りいい気持になってそろそろ夢から醒める頃あいかと思った瞬間数数分前より強い風が吹いて、その勢いに私は耐えられず体制をくずして転んだ。

橋丸えりつ「痛い」

 夢だというのに痛みを感じた。坊主男が私にゆっくりと寄ってきた。男が私のすぐ前にやってくるだろう数秒間私はひとつ答えを出したこれは夢ではないと。そう結論づけた瞬間起き上がりまだひりひりする足で後ろを振り返らずに草原を思いっきりかけた。

 橋丸えりつ「まだ死ねるか」

 きっとあの男は私に変な契約とかさせてモンスター達と戦わせる気だろう。

 死の予感を感じると頭の中には私の未完成の妖艶な作品達がよぎっていた。ふしだらな奴らが私にとっては立派な子供たちである。絶筆する未来なんてありえない。

神様「少し待ってくれ」

橋丸えりつ「うわーーーー」

 何メートル後ろにあるはずの声が聞こえため、悲鳴と共に足を滑らせ私は草原に大きく接吻を交わした。

神様「悪いな怖がらせてしまった。そうか少しまってくれ」

 そうすると坊主男は無様に転がっている私に近づき、手を伸ばすと一秒後に私をお姫様だっこした

橋丸えりつ「えっちょなになに」

神様「こうすると女性は落ち着くと。知りあいのエルフに教わったのだが違ったか」

橋丸えりつ「エルフえっははは」

 落ちつかず意味になってないことを発していると坊主男は丁寧に私を降ろし、直立不動の女の頭に手をおき地味に上下に動かした。

坊主男「こうするとさらに女性は落ち着くときいたのだが、どうだろう」

 シュールすぎる事態に冷静さを取り戻して、この人はいい人なのだろうと悟と真顔で

橋丸えりつ「逃げてすいません。後、初対面の方に頭をなでられると混乱します」

 と答えると、坊主男は少し眉毛を下げすまんと言って申し訳なさそうに手を降ろした。

 橋丸えりつ「あのすいません話の腰を折ったのは私なのですが、頼み事とは何でしょうか」

神様「実は私の友人の女神と交流を交わしてもらいいんだ」

橋丸えりつ「交流ってどんな方法で」

神様「君が書いてる官能小説を彼女に見せて欲しい」

 自分自身の背筋が凍る音が確かに聞こえ、汗が流れ出しきたのがよく分かった

橋丸えりつ「なんでそれを、天音しか知らないのに」

神様「私は神だそのぐらい知ってる。」

 今の私には坊主男が本物の神様だということよりも、官能小説を書いてるという秘密が流失した方が問題である。私は神様に近づき正座をして土に頭をつけ低いトーンで

橋丸えりつ「お願いします。その女神様との交流以外にもあなた様の命令なら何にでもお答えしますので、私が官能小説を書いてる事を誰にでも口外しないでください」

 と嘆願した。

 30秒程沈黙が続くと強い力に引っ張られまた私は神様にお姫様だっこをされていた。

神様「君がこの姿勢を嫌うのは分かっているが、今の君の姿勢は見るに耐えない。このままで話を続けていいか」

 自分のプライドを捨て行った発言や行為、またお姫様抱っこ等現在の状況を振り返り頬を赤くしながら、首を縦に振った

神様「私の知り合いの女神がいたく君の作品を気に入って君と学校生活を送り出したいと言い始めたんだ」

橋丸えりつ「えっ私の作品が女神様が好きになるのはなんとなくわかるんですが、何故それで私と学校生活が送りたくなるんですが」

神様「なんでも彼女はここ最近下界で人間と学生生活するのに憧れてるらしくてね、それも同じ趣味の人間なら、なおいいらしい」

私は神様との会話の中で何個かの疑問が生まれ学校生活で生まれた癖(質問する前には手を上げる)を行い発言した

橋丸えりつ「質問いいでしょうか」

神様「いいぞ」


橋丸えりつ「女神様は、官能小説が好きという事ですが性を象徴する神様か何かなのでしょうか」

神様「いいや、彼女は新米の文学の女神様だ」


橋丸えりつ「何故私に会いたいのに女神様ではなく、貴方様が私の前に現れたんですか」

神様「彼女は下界に行く準備が忙しくらしくてそれで変わりを頼まれたんだ」

 私は次の質問を問おうと口を開こうとした瞬間に、神様は遮るようにこう言った

神様「すまない。もう時間だ。」

橋丸えりつ「えっまだ質問が」

神様「充分に対応できなくて悪い。最後になんだが、彼女に伝言を頼まれているんだ」

橋丸えりつ「何でしょうか」

神様「今度は君の異世界物を読みたいと」



わたし異世界ものはかけませんよと言った瞬間いつもの天井が視界を覆った

橋丸えりつ「私帰ってきた、てか女神様と神様の関係きくの忘れた」



あれから特に何も起きてない。一応苦手な異世界物は書いているが、全く女神様が喜んでくれそうな作品は書けてない。


あれは夢だったんだろうか



矢崎天音「あれあの人面白そうな先輩」

 天音が指差す方には長身でスレンダーで顔はあどけない美人が笑顔で歩いていた

橋丸えりつ「あの人が官能小説を空き教室で音読してて興奮してたなんて想像できないけど」

 えっわわたしみたよーといいながら矢崎が私を小突いてる時、その先輩が私のほうにやってきていきなり手を握った

三島かなえ「会えて本当に嬉しいですえりつ先生」

橋丸えりつ「何で私の名前を」

三島かなえ「私女神ですからそれぐらい分かりますよ先生」


 

この時私の運命は動き始め青春も同じくスタートした。文学の女神との青春が




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