同じ鍵 の はずなのに

fujimiya(藤宮彩貴)

第1話 はじめに&波乱しかない

こちら、『同じ鍵』シリーズの最終章一歩手前の作品になります


次はどういうものを書こうかとか、現状では決めていませんが、『同じ鍵』は長くなりすぎてしまったので、このへんでいったんまじめに締めておこうかと


こっそり再開&不定期更新です。書き終えた部分より、カクヨム先行で順次公開します。落ち着いたら、エブリスタのほうへも転載はじめます


では、どうぞ最後までお楽しみくださいませ





***




「はあああああああああああああああああああああああー」


 三月末。

 さくらは新幹線の中にいた。

 先週、誕生日を迎えて二十四になった。自分で言うのもアレだが、ちょっとはおとならしくなったと思う。社会人として、妻として、母として。

 けれど、かかえている問題は大変になるばかり。


「あと五分で京都に着くぞ、母さんを起こせ」

「うん」


 となりに座っている玲に指摘されたさくらは、だっこしていた皆を玲に預け、窓側席の聡子に声をかけた。


「お母さん、そろそろ到着です。起きてください」


 大きな大きなおなかの聡子は、ぐっすり眠っていた。肩を強めに揺らすと、ようやく覚醒した。


「……ん。もう、きょうと?」

「はい。着きます」


 さくらは、聡子の出産の付き添いで春の二か月間、京都に滞在することになった。


***


 聡子は五月に出産を控え、希望の産院である片倉医院へ移動するため、京都へとやって来た。

 わがままだの、自分勝手だの、さんざん非難されたが、反対を押し切ったのは涼一だった。


「聡子の出産もこれがほんとうに最後。最後のわがまま、聞いてあげたい」


 そう諭されると、類もさくらも強く反対できなかった。


 四月から、高齢で多胎の聡子は管理入院がはじまる。同行するお世話係に、聡子はさくらを迷わず指名した。ちまちまと歩けるようになって手のかかる、皆も一緒だ。


 東京には、仕事がある涼一と類が残った。だいすきな保育園を離れたくないあおいも残留組。

 東京~京都間の連絡係には、玲が就任してくれた。玲の東京帰還も、聡子を送り返すまでは保留。


 相変わらず、聡子が中心の柴崎家。変則家族のはじまりである。

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