第9話 闇への招待状

あれから誠也は、学園で最近、楓のことを避けていた。

自分のことをあまり知られたくなかったのと友達が今までずっといたことがなかったから気遣ってくれるのがとてもうれしかった。

もしも、自分と一緒にいたら、厄介なことに巻き込まれるかもしれない。

親がヤクザで巻き込まれることは、あるかもしれないが自分が原因で巻き込むのだけは、いやだった。


そして今日も授業が終わり帰ろうとすると楓に手をつかまれた。


「まって、なんで避けるの?」


「別に避けてはいないけど、、、」


「嘘、あれから誠也、私の目を見て話してくれなくなた。」


「ごめん」


「別に私、誠也がヤクザでも何とも思わないわよ。この前は、ちょっと驚いちゃったけどね」


「そう山隈に言うように言われたのか?」


「パパは、関係ないわ」

そう、楓は胸を張って答えた。


「はぁー、ごめんちょといじわるした。ほんとは、気遣ってくれる楓をこっちの世界に踏み入れさせたくなかったんだ」


「私もヤクザの娘よ、火の粉ぐらい自分で払えるわ」


「どうやら、そうみたいだね。」

誠也は、笑顔でそう答えた。


「でも、なにかあったら言うんだよ、必ず助けるから。」


「ええ、そうさせてもらうわ」


そういって楓と別れた。






~警察所~

河辺聡太は、悩んでいた。

あの事件以降、聡太は落し物捜索係と化していた。

聡太は、もともと人々を救う警官になりたくて警察になった。

しかし、前の事件で追走を使った際に寝込んでしまった。聡太も初めての死者の追走だったためある程度覚悟していたが自身に降りかかった恐怖とストレスは想像を絶するものだった。

そして最近、Fランク能力者ということもあり他の警官から嫌がらせなどを受け始めていた。


「おい、居眠り警官この忘れ物探しといてくれ~、いやだったら捜索願でもいいんだがな」


そういって、先輩の警官が嫌がらせをしてくる。

忘れ物といってもストラップやタオルなどどうでもいいものばかりだった。

そして、聡太は前の事件のトラウマにより捜索願などの安否が定かでは、ないものを追走することができなくなっていた。


「おい!何やってる」


そう声をかけてくれたのは、長谷川先輩だった。


「そこのF級居眠り警官は戦力にならないのでせめて、忘れ物探しというとても大切な仕事をしてもらっているんですよ。」


「戦力外だと!こいつのおかげで前回の事件が解決できたんだぞ!」


「そ、それは、、」


そういって先輩警察官は、自分の席に戻っていった。


「ありがとうございます。先輩」


「お前もなんか言い返せ、能力のランクのことで言われて悔しくないのか!」


言葉が出てこなかった。

所詮、先輩はB級能力者だF級の苦しみなんてわからない。

能力ランクのヒエラルキーの最下層にいる人間の気持ちなんてわかるはずがない


「今後気を付けます。」


そういい、警察署を後にした。

そして、珍しく居酒屋で酒を飲んだ、ちょうど明日は休みになっていたので思うぞんぶん飲んだ。


「おじさん、もう一杯」


「お兄さん大丈夫かい?そんなに飲んでなんかあったのかい」

店主が心配そうに聞いてきた。


「F級能力がなんだってンだって話だ、活躍しているシーカーでもF級はいるのに何でだよ」


そういって聡太は酔いつぶれてしまった。




朝目を覚ますと豪邸の敷地内で寝転んでしまっていた。


「くそ、どうせこの家に住んでいるやつも高ランクなんだろ!」

誰もいないと思ってつぶやいた瞬間後ろで声がした。


「人んちの目の前で何してるのお兄さん」

振り返ると学生と黒服をきた二人がいた。


「もしかして、力がなくて嘆いているの」


「だったら、なんだっていうんだよー!」


そういうと黒服が一瞬のうちにして、頭に拳銃を押し当ててきた。

体から冷や汗が止まらなかった。そして、酔いが一気に引いた。


「やめろ」


学生が一声かけると黒服は気づけば学生の後ろに移動していた。


「力がほしい?」


「ほしいがどうにもならんよ」


「あげる手段があると言ったら?」


「本当か、教えてくれ!」


「お願いを聞いてもらうよ」


「内容は?」


「坂田修斗っていうシーカーを探して殺して、その代りに先払いで力をあげるよ」


「や、やる」

力が無いものは、守りたいものを守れないならば、一人を殺して多くを救うほうがいい

そして、あの糞先輩の警察官にも復讐ができる。


「そう来なくちゃ」

そういうと、学生は聡太の頭に触れたその瞬間、力が倍に膨れ上がった気がした。


「こ、これは、すごい」


「期限は一週間守れなかったらすべての力失うからね」


そういって学生と黒服は車に乗って走り去った。




「誠也様いいんですか?あんな奴に能力をお使いになって」


「大丈夫、一度力を知った奴はもう前の自分には戻れないさ、さぁシーカー相手にどれだけ戦えるかな」


誠也は、面白いおもちゃを見つけたように笑顔でいった。


「あなたもお悪い人だ」


「ヤクザにいい奴なんていないぞ」



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