第25話 プレイの一環

サラヴィの誕生日から数日が経った。

つまり、主人を泣かせただろう日から数日、ということになる。

表面上、彼女の様子は変わらない。

学園に行って、勉強をして戻ってくる。家でも勉強している。

最終考査が近いからだ。つまり卒業試験となる。


だが、いつもは勉強に付き合わされるアルゥバースは一度も呼ばれない。

それが変わった点だ。

そして、奥様とラーナからは冷ややかな視線を向けられるようになった。

正直、主人以外から冷めた視線を向けられても何も感じないので軽く会釈するにとどまっている。

だが、サラヴィから避けられることは堪らない気持ちになる。


「ああ、お嬢さま…っ。流行りの放置プレイですね、分かります…もう、このままどうにでもしてください。どこまでもあなたについていきますよ!」


大喜びしていた。

果てしなく、どこまでも歓喜に打ち震えていた。


主人が知れば複雑な気持ちになっただろうし、恋心にも多少影響しただろうが、残念ながらというか幸いにもというか、彼女は知ることはなかったが。


「さて、本日の害虫の報告書を仕上げますか」


自室の机に向かって、アルゥバースは気を取り直して筆を執る。

害虫ことエルフーン=デセル=サガントは今も精力的に活動中だ。

早々に消し去りたいが、どんな虫でも一国の王子であることに変わりはなく。

今でもしっかりべったりとサラヴィにくっついてくる。

邪魔というよりも目障りだ。


朝からサラヴィと一緒の教科を学び、昼の食事には横に並び、挙句の果てには帰りの馬車にまで乗り込んでこようとする始末。

そのたびにガンレットが牽制するが、全くもって聞く耳を持たない。

なんとも精神が強い男だ。単なる馬鹿ともいう。


サラヴィは毅然とした態度で寄せ付けないようにしているが、照れ隠しだと思い込んでいるようで、めげる気配もない。

というより、彼女に慕われていると思い込んでいるような節がある。

それは彼の言葉からも明らかだ。

隠さなくても知っているだの、お前の気持ちはわかっているだのとのたまう。

最初は真剣に頭がおかしいのかと思ったが、彼に吹き込んだ輩がいるということに気が付いた。つまり、彼の行動をそそのかしている者がいる。

その者を突き止めなければ、第二、第三の害虫がわくのは目に見えていた。


ガンレットも察したようで、自分の方でも調べてみると言っていた。だが彼一人よりも自分でも動いた方が格段に情報収集できる部分もある。要は適材適所だ。

彼が調べられない場所を、自分が補えばいい。


アルゥバースは今日一日のエルフーンの動きを書き出すと、そっと窓から外へと身を躍らせるのだった。

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