Q.???しないと出られない部屋ですか?
ヒトデマン
A.???して脱出する!
「???しないと出られない部屋」
その部屋にはデカデカとそんな看板が取り付けられていた。部屋の色はピンクに染まっており、大きなダブルベッドが一つ、その上にそれぞれ♂と♀のマークの付いた枕が二つ乗っかっていた。その内装はそうさながら──ラブホテルであった。
「なんなのよこれーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
学園のマドンナ、
なにか犯罪に巻き込まれたのではないかと自分の体をチェックする。しかし衣服の乱れなどは特に見受けられず、変なことはされていないと安堵した。しかし携帯などの連絡できるものは持っていなかった。
さらに辺りを見渡すと部屋の隅で一人の男がガサガサと部屋の物品を物色していたのに気づいた。自分を連れ込んだのはこの男?──そう不安がりながら彼女はその男に声をかけた。
「ね、ねぇあんた。これはいったい……?」
ふりかえってこちらを見た男の顔をみて彼女は愕然とした。
その男は、校内で電気消費量の高い家電を大量に使用しブレーカーを落とす。グラウンドで花火(それも打ち上げ花火)を勝手に行う。プールに多種多様の魚を入れ水族館を開く。
などなど、起こした問題行動は数知れず、そのくせいつも全教科満点をとり、教師たちに歯がゆい思いをさせている学校一の変人、
「あ、アンタはーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
「なんなんだ急に、うるさいから黙ってくれ。」
わかるは眼鏡をチャキッっと直して言う。
「黙っていられるもんですか!私をこんなところに連れてきたのもどうせアンタなんでしょ!『???しないと出られない部屋』ってなによ!私を変なことに巻き込まないでくれる!?さっさと帰らせてもらうからね!」
そういって
「ちょっと!なに扉を閉めてるのよ!さっさと開けなさい!」
「ぐわああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「きゃあああああああああああああ!!!!!!!!」
「お前と俺の体が触れると、こうやって俺の体に高圧電流が流れるようになっているようなんだ。わかったら、もう二度とうかつに触れないでくれ。」
「ご、ごめんなさい……って、アンタわかってたような口ぶりだけど気づいてたの?」
「さっき寝ているお前の状態を調べようとしたらわかった。」
「……て何勝手に触れようとしてたのよ!」
落ち着いた二人はベッドに腰かけ、状況を冷静に分析していた。
「自己紹介から始めよう。俺は
「え?アンタ私の名前しらないの?学園のマドンナであるこの私を?現役高校生でありながらアイドルとして活躍してるこの私を?」
「しらん。」
「こんにゃろーーー!!!私はちゃんとアンタの名前覚えてやってたって言うのに!私の名前は
「それでこの部屋の状況なんだが。」
「おい!」
二人は気を取り直して(こんどこそ)状況を冷静に分析していた。
「この部屋の扉には電子ロックがかかっている。1から9の数字を4ケタ打ち込んで解除させる仕様だ。そしてさきほど俺に電気を流したコレなんだが……」
そういって
「俺はさっきそれを調べようとしてな……なにか気になるものは出ていないか?」
「あなたの権限で接触時の高圧電流を解除できます。『???』するときに解除してください。相手のリングの『???しないと出られない』をタッチすると解除できます。」
それを見た
「あくまで私から『したいな♡』ってやらせる仕様なわけ……?上等じゃないの。」
「なあ何が書かれて……」
「同じ!おんなじものよ!」
そういって
「それでここから出る方法なんだが……」
「私は死んでもやんないからね!」
「おまえ……ここから出る方法がわかるのか?」
「いやいや……このラブホみたいな部屋とか……『???しないと出られない』ってフレーズとか……やることはアレしかないでしょ……」
「?」
「嘘でしょ……?」
「とんと見当がつかぬ、頼む教えてくれ。」
「う、うるさいわね!そんなの自分で考えなさいよ!」
「わかった。」
「へ?」
「こうなったら意地だ。お前の意見に頼らずとも、この部屋からでる方法を自分の力で見つけ出してやる。」
(ここに連れてこられてから何時間たったかわからないけど、すぐに家族が私が帰ってこないことに気づくはず!警察が助けにくるまで私の純潔を守らないと!)
「なあこれなんだが。」
「な、なによー!私に何をする気⁉道具越しになら、私に触れられるんじゃないかと思ってるんじゃないでしょうね!」
「いや、道具越しに触れても駄目だった。」
「なに一回挑戦してんのよ!」
「マッサージ機がおかしい?」
「このマッサージ機、振動が不均一なんだ。」
「よくわかるわねそんなこと……」
「そこでこのフウセンモドキなんだが。」
「あんたまさか!肌と肌が直接触れなきゃ大丈夫とでも思ってないでしょうね!」
「いや、それも無理だろ。」
「ま、まさかアンタそれもためし──!」
「さっきお前が服越しに肩に触れて電気が流れたんだから、こういう薄いのならなおさら無理だろ。」
「……そうね。」
「それでそのコン……ゴムをどうするの?」
「マッサージ機の振動が何かを表しているならそれは音声じゃないかと思ってな。」
「なるほど……即席のスピーカーってわけ、考えるじゃない、だてに全教科満点はとってないわね。」
そして広げたゴムにマッサージ機を近づけると……
「あんっ♡、ああんっ♡、おっきぃ♡!、おっきいよぉ、おおきさが重要なのぉ♡!」
甲高い声を上げる女性の音声が聞こえてきた。
「うがーーーーーー!!!!!!!!!」
「なるほど……」
「いや今ので何がわかったの!?」
「あとめぼしい情報源になりそうなのはこのテレビだけか……」
二人は部屋につけられた大型のテレビの前に立っている。
「ものすっごく嫌な予感がするんだけど……」
「よっ。」
「おい!」
「我々の住む太陽系は太陽と惑星を含めて9つの星で形成されていて……」
「ほっ、まじめな映像だわ。」
「私たちの祖先は太陽から数えて四番目の星、地球に生まれて……」
「面々と遺伝子が受け継がれてきて……」
「つまり私たちがここにいるのは両親が子作りしてくれたおかげで……」
「ん?」
「私たちも子作りして次世代を残していきましょう!さあレッツ子作」
「なるほど……」
「いやさすがに今のでわかるわけねぇだろうがー!」
「いや。」
「すでに情報は出尽くしたと考えるべきだ。」
「確かにもうろくな情報源になりそうなものはないと思うけど……」
「俺たちをこの部屋に連れ込んだヤツらは俺たちを試している。ここまで見聞きしたすべてのものに意味があるととらえるべきだ。」
「ロクなものは全然なかったけどね……」
「まかせろ、俺が必ずこの部屋からお前を出してやる。」
*
「ハア、ハア。」
「も、もうやめなさいよ。あなたの体、電気でボロボロじゃない!」
自信満々に宣言した
「自信満々にお前を出すと宣言した以上、やめるわけにはいかん。」
「す、すぐに助けが来るかも……」
「来なかったらどうする?この食料もない部屋で何日持つ?水だけで人が生きられるのは一週間が限界だ。」
そういって
「情報が足りない……だがすでにめぼしい情報は……」
「安心しろ。最高でも9×9×9×9の6561回試せば扉は開く。」
そういってまた電子ロックに手を伸ばす──
ガシッ
その手を、リングを掴まれる形で
電流は流れなかった。
「そんなの──そんなのアンタが死んじゃうじゃない!」
「だが他に方法は──」
「接触時の高圧電流を解除しました。脱出に必要な条件が整いました。」
その後、
「私ね、ほんとはずっとアンタに憧れてた。外面を良くしようと、必死に猫かぶってた私にとって自分のやりたいことに全力のアンタは、とってもとっても眩しかった。」
そして
「だから……いいよ。脱出しよう?一緒に。」
「ああ……脱出しよう……謎はすべて解けた!」
「へ?」
「正解の番号は左から……1,4,3,5だ!」
そして電子ロックは解除された。
「……ええええええええええええ!!!!!!!!!????????」
*
「では順を追って解説しよう。」
「私の勇気はなんだったの……」
「重要なのはテレビで流れた番組の内容だ。」
「まともだと思ったら変だったヤツ?」
「最初に『太陽系は太陽と惑星を含めて9つの星で形成されていて』と流れただろう?この9つというのが電子番号の1~9の番号と当てはまるのではないかと考えた。」
「なるほど、例えば太陽から数えて四番目の星である地球は4を表しているわけね。」
次に
「あの音声ではおっきいのが重要という情報を得た。」
「それってあの……男の……ごにょごにょ。」
「おそらくそれは星の大きさを指しているのだろう。」
「そう考えちゃうの!?」
さらに
「次に候補となる星を見つける。まず俺のリングにあった『太陽』だ。これは数字の1を指す。」
「それと、私の『地球』で4ね。」
「それを見せてくれてたらもっと早く謎が解けたんだがな……」
「ご、ごめんなさい。」
しかし、
「でもあと二つの星の番号は?そんな情報あったっけ?」
「あるだろう。ベッドの上に。」
そういって
「♂と♀のマークの付いた枕だ。」
「それがどうしたの。」
「♂は火星を、♀は金星を表している。」
「……は?」
「いやいやいや!あれって性別を表しているんじゃないの!?」
「それは分類学の父、カール・フォン・リンネがそう決めたんだ。もともとは惑星を表す記号なんだよ。」
「えっとじゃあつまり、火星が5、金星が3ってわけ?」
「そう、つまり入力する数字を1,3,4,5に絞り込めたわけだな。」
「なるほど……♂が火星……仮性……ぷぷっ!」
「笑う要素あったか?」
そして二人は電子ロックに目を向ける。
「そしてお前が勇気をもって、自分が感電するかもという恐怖に打ち勝ち、俺のリングに触れてくれたおかげで最後の情報が表示された。」
(あっ、そういう風にとらえたんだ。)
「電子ロックの>(だいなり)は大きさ順に打ち込めということ、もちろん数字の大きさ順じゃない。対応する星の大きさ順だ!」
「それなら私も分かるわ。太陽がもちろん一番大きくて、あとは地球、金星、火星の順ね。」
「そう、だから1,(太陽)4,(地球)3,(金星)5,(火星)となる。」
「そしてロックが解除されたのね。」
二人はドアの前にたってレバーを掴む。
「さて、俺たちをこんな部屋にぶち込んだやつらを解明するという謎がまだ残ってるな。」
「その時は私も協力するわ、現役アイドルにこんなことをして、どうなるか思い知らせてやる!」
そして二人はドアを開き、この部屋から脱出していった。
──『謎解き』しなきゃ出られない。
Q.???しないと出られない部屋ですか? ヒトデマン @Gazermen
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