第44話
結局お泊まりは無しで、僕は遅くなりすぎる前に二人を家まで送っていくことになった。
さっきまでワイワイ騒いでいたのが嘘みたいに、少しだけ夜風の吹く静かな道を、僕たちの声だけが満たしていた。
「今日は来てくれて本当にありがとう、すごく楽しかったよ」
「私も楽しかったですよ。お二人とも温かくて……いいご両親ですね」
「うん、ありがとう。……でもほんとに、母さんがゴメンね。きっと二人が来てくれて嬉しかったんだと思う」
「いいや、いいんだ。ボクも楽しかったからね。あんなにはしゃいだのは久しぶりだよ」
「そっか、それならよかった」
こうして話をしながら道を歩くのも、随分と慣れてきた。
これじゃあ二人送った後、一人で家まで帰るのがなんだかすごく寂しくなりそうだ。
でも、それが嬉しかった。
そう思えることが幸せだった。
「では、私はここで」
「うん。じゃあ、また明日学校で」
「はい、今日はありがとうございました」
先に千堂さんの家に着き、手を振りながら家の中へと帰って行く彼女を見送ると、とうとう僕と神谷先輩の二人きりとなった。
それから少し話している間に、もう神谷先輩の家がすぐそこまで近づいていた。
「もうすぐ先輩の家だね。……それじゃあ、先輩も、また明日」
「あぁ、また明日………」
何か思うところがあるのか、挨拶の途中で思案顔になる神谷先輩。
「十宮君、」
そうして先輩の家の門まで着いた時、
「今度の日曜日、一緒に出掛けないかい?」
神谷先輩はそう言った。
「? ………うん。日曜日の予定も無いし、僕は大丈夫だよ。それじゃあ千堂さんにも予定を聞いて……」
けれど、先輩の様子は何か違っていて……
「いいや、そうじゃないんだ。できればその……、彼女も一緒ではなく……」
「?」
「ボクと、キミの…………二人で行かないかい?」
そう言う先輩の顔は暗くてよく見えなかったけれど、その声はどこか緊張しているみたいだった。
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