第30話 膝枕・リターンズ

前回のあらすじ

ものすごいピンチ!


謎の汗がダラダラと流れる。

気分はカエル。

僕もう帰る!

……現実逃避はやめよう。

下手に誤魔化してもすぐにバレてしまいそうな気がして、堂々と正直に話すことにした。


「膝枕だ」


「は?」


「ごめんなさい」


凄まれた。

食い気味に謝ってしまう。

誰だよ堂々としてればいいって言った奴。

そんなの出来るわけにゃーよ。

あぁ、哀しいね。誰か僕に勇気をください。

ティガァァァーーー!



「膝枕……膝枕……」


そんな現実逃避中の蓮也をよそにぶつぶつと呟く真由。

その目は何かを狙っているように鋭く光っていた。




なんとか正気を取り戻し、この場をなんとか乗り切ろうと蓮也があれこれ考えていると。


「おにいちゃん」


「はいっ!」


ダメだ。ただ呼ばれただけなのにビシッと背筋が伸びる。

まぁ、まだ寝たままなんだけど。


「正座」


「イエッサー」


従う以外の選択肢があるはずがない。

あるはずがない。

すぐさま体勢を正座へと移行する。

その時真由が少しだけ残念そうな顔をした気がした。



言われた通りに正座をする。

真由は相変わらず寝転んだままで、顔が見えない。


「え〜と、それで。これからどうすればいいのでしょうか」


つい敬語になってしまう。


「……」


「真由?」


返答が無いので下を向くと


「うおっ」


急に、真由が無言で僕の足に頭をのせてきた。

こ、これは……っ。


「真由」


「……」


「これは所謂膝枕というものではありませんか?」


「…………うみゅ」


ただしあの時とは逆。


「今他の女のことを考えなかった?」


「滅相もございません」


エスパー多くない?


「……膝枕、して欲しかったのか?」


「……ん〜ん〜う〜ん」


なんだか煮え切らない態度の真由。


「……僕が千堂さんに、膝枕されたのが、気になったのか?」


「ーーーっ!」


無言でぐりぐりと頭を擦り付けてくる。


「そうか……」


「……むぅぅーーー」


「そうか……」


そうか……



…………


「あーーもぉーーーーかわいいーーなぁぁーー!」


「⁉︎」


頭をうりうりと撫でる。


「かーいぃーなーー」


「おにいちゃん⁉︎」


「ははははーーー」


このあと1時間くらいじゃれあった。

足めっちゃ痺れた。

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