番外編 蓮也のおつかい
蓮也が中2の時の話です。
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今、僕はスーパーに買い物に来ている。
母さんからの
「どうせ暇なんでしょ?」
という言葉にうまく反論できなかった僕を笑ってくれ。
ちなみに真由は友達と遊びに行っていたらしい。
下手に
「真由に頼めば?」
と言わなくてよかった。
死人が出るぜ。
僕だ。
※※※
え〜と、あとは洗剤、と……
「ママーー!これ危ないよ!」
なんか小さな子供が騒いでいる。
どうやら洗剤を見て言ったようだ。
ははぁーん。これはあれだ。
多分、洗剤の‘まぜるな危険’という文字を見て怖がっているのだろう。
僕も昔は、洗剤はへたに動かしちゃダメだと怖がっていたな。
かき混ぜちゃダメだと思ってたんだっけ。
まぁ、実際は2つのタイプの洗剤を混ぜちゃだめだという注意書きだったと思う。
すると、さっきの子供が親のところへ駆け寄っていった。
「ママー!あれダメー!」
「大丈夫よ。ちゃんとすれば怖くないから」
「だってだって、あれ‘ゆらすな’ってあった!」
揺らすな⁉︎
混ぜるなじゃなくて⁉︎
ハードル高すぎだろ!
揺らすなってどう解釈しようが‘揺らすな’なんだけど⁉︎
親子の会話は続く。
「大丈夫よ、ママがいれば大丈夫だからね」
「ホント?」
「本当よ」
そう言うと、その母親は洗剤の方へと歩いて行き、洗剤をつかんでそのままレジへと行った。
「ほら、大丈夫でしょう?」
「ママすごい!」
子供は無邪気に喜んでいるけど、僕には分かった。
あの人はとてつもない事をしていると。
さっき、洗剤を運んでいる時、あの人は全くぶれる事なく、まるで床の摩擦がゼロであるかのように進んでいた。
その親子は買い物を済ませて帰っていった。
その勇姿を見送った僕は洗剤のコーナーへ向かう。
そこには確かに‘ゆらすな危険’との注意書きがあった。
今の僕に果たしてできるのか?
……無理だ。
今の僕は……あまりにも無力だ………
強くなろう。
いつの日か、洗剤を買えるようになるその日まで。
僕は洗剤を買うのを諦めてレジへと向かう。
レジの店員に訊ねる。
「洗剤って、僕でも買えるようになりますか?」
レジの店員は少しだけ驚いて、それから軽く微笑み、
「慣れですよ、慣れ。きっと君も、1人で買える」
「ただいまー。ごめん、洗剤だけ買えなかった」
「おかえりなさい。あれ?頼んだやつ無かったの?」
「いや、僕にはまだ早かったみたい」
「何言ってるの?」
どうやら僕が行った所はこの町でも特に変わってるスーパーだったらしい。
p.s. 洗剤は揺らさずに買えるようになりました。
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・補足説明
洗剤(仮):正式名称は‘洗剤(仮)’。このスーパーのみで販売されている洗剤。レジのバーコードスキャンにより危険性を失う。お値段据え置きで通常の洗剤よりも三倍すごいと言われているが、バーコードスキャン前に揺らしてしまうと爆発の危険性があるため、達人にしか扱えない。どのように輸送されているかは不明。噂によればある1人の手によって製造、輸送、販売されているという。
スーパーマーケット(仮):この町でも特にヤバいと言われているスーパー。正式名称は‘スーパーマーケット(仮)’。しかし、その昔、このスーパーには一◯球(イーシン◯ュウ)が‘時価’で売ってあった(現在は販売されておらず、誰かが購入したのか、ただの伝説なのか、その真偽は不明)と言われており、この町の人からは‘ドラゴ◯ボールスーパー’と呼ばれている。
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