第13話 こうして彼女は修羅場へ挑む

那月視点そのさん

ーーーーーーーーーーー


「おかえりなさい」


「た、ただいま」


「どう?彼と友達になれそう?」


「!え〜と、うん、そうだね……あ、ごめん、ちょっと急いでるんだ」


「?」



姉との会話を打ち切って部屋に駆け込む。


「はぁ………」


電気もつけないで1人考える。

姉からの頼みは友達になることだった。

でも、分かってる。

今は、十宮蓮也を好きになってしまった自分がいる。

だから、だから、友達ではなくて……。


※※※


次の日にさっそく学校で会ってしまった。

反射的に逃げてしまう。


行き止まりにあたったので、ここで少し話をしようと思った。

計画通りに。

まずは昨日会ったことを。


あ、なんて呼ぼうか。

十宮君?……蓮也君?

なんか蓮也君って呼ぶのは恥ずかしい。

でも蓮也君って呼びたい。

あぁ、でも昨日会ったばかりなのに蓮也君はおかしいかなぁ?

ど、どうしよう。


「れ……十宮君は」


結局十宮君になってしまった。

いつか蓮也って呼べるようになりたい。


とりあえず本の話題を振ろう。

……ダメだった。

あぁ、なんとか持ち直せた。

このままの流れで、昨日一目惚れをしたって。

恋人になってくださいって。

言うんだ。



すると十宮君は急に


「僕達って友達なんですか?」


と言ってきた。

どうやら昨日、別れ際に言ってしまった言葉のことを言っているようだ。

しまった。

テンパって思わず言ってしまったのがあだとなった。

違うんだ、友達じゃなくて、その、こ、恋人に……

あぁ、十宮君が落ち込んでいる。


「あ、あぁ!そんなに落ち込まないでくれ!で、でも、友達じゃなくて、その、こ、こ」


言え、言うんだ!恋人になってって。


‘友達じゃなくて’という言葉に反応したのか、さらに落ち込んでいく十宮君。

十宮君のこんな顔は見たくない


「!……あぁ!そうだよ!ボクたちは友達だよ!」


言ってしまった。


「本当に?」


「ホントにホントに」


「僕達友達?」


「ボクたち友達!」


言ってしまった。でも十宮君はとても嬉しそうだ。


「はぁ、ちゃんと言えなかったなぁ……まぁ最初の目的は果たせたんだけどさぁ……」


最初に姉から言われたのは友達になること。

でも今は……




「あなたは幽霊ですか?」


「何その不正アクセス防止用の確認みたいなやつ」


こんな十宮君と恋人になりたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る