ニコニコマートダンジョン前支店
コーヒーメイカー
第1話 ダンジョン探索隊の弁当
「これはダメだな」
ガルトスの不機嫌そうな呟きを、セージは申し訳ない気持ちで聞いていた。二人の前には、灰の山が広がっている。
一瞬のことだった。
後ろから急に現れた炎の精が、あっという間にこの光景を作り出したのだ。
「すみません、ガルトスさん」
セージは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
荷物の見張り番は自分の役目だったのだ。
しかも、やられた荷物がまずい。
「まさか、食料をやられるとはな…」
やられた荷物は、往復分の食料だった。
「本当にすみません」
セージは必死に頭を下げた。
セージはもともと英雄に憧れた青年だった。そのために必死に訓練し、15歳で村を出て、何年も小さく実績を積んできた。
そして今回、運良く『竜殺し』ガルトスのパーティが中心となって率いるシグの街のダンジョン探索部隊に、荷物番として同行できたのだ。
荷物番とはいえ任せられるのは、一定の評価をされている証でもある。何より食料だ。その重要性はよくわかっている。
それがこの始末。言い訳のしようもない。
セージは震えながら、ガルトスの沙汰を待っていた。
「むう…」
ガルトスが、その巨躯で唸り声を上げる。
ガルトスは見上げるほどの巨体を、漆黒の重装鎧に包んだ大男だ。その巨体に見合った、大人の男ほどの大きさの大剣を振り回して戦う姿はオーガにも例えられる。
その厳つい顔立ちはいくつもの傷跡で彩られ、彼の歴戦の象徴だ。
その究極の形が、ウダ地方で悪さをしていた悪竜の討伐。三日三晩の激闘の末、長年ウダを苦しめたそれを打ち取ったのだ。彼はウダ地方では、今でも勇者と称えられる。それが『竜殺し』
そんな男のため息だった。
セージはびくりと肩を震わせた。
「…セージ、なぜ、食料が大事か、わかるな?」
「…はい」
セージも、その理由はよく分かる。
いつか、ガルトスのような英雄になりたい。そんなふうに願って、たくさん勉強をしてきた。ダンジョンのことももちろん含まれる。
ダンジョン内では、食料の補給は絶望的だ。食糧は、ダンジョン探索で最も重要な要素だ。なにせダンジョン内では食糧が手に入らない。
ダンジョン内の魔物は、外のものと違ってドロップ品へと変質する。大抵、ポーションや、ちょっとした装備品などだ。売ればそれなりの稼ぎにはなる。だが、それは外に出られればの話だ。仮に現金になったとしても、そんなもの食べられるわけもない。
だからダンジョン内での食糧管理は、常に厳格に行われる。もしネコババなどしようものなら、八つ裂きにされても文句は言えない。
それをだめにしてしまった。その責任は、よく分かる。
「…そうだ」
セージがその理由について説明すると、ガルとすは重々しくうなずいた。
その重苦しい声が、セージの方にのしかかる。
「…それをだめにしてしまった。それをどう思う?」
「…すみません、どう責任を取っていいか」
今は時期も最悪だった。
場所は15階層、ダンジョンに入って五日目の場所だ。ガルトスのおかげで、かなり速いペースでここまで来れた。小さなキャンプを作っての小休止だ。
今いるのは、ボス前でかろうじてセーフアリアと言える場所だ。そして、いよいよ明日、ダンジョンに挑もうとしていたのだ。
それが全てダメになった。
それだけではない。いまいるのは、ダンジョンに入って五日掛かる場所だ。だがその間も魔物と戦い、道を切り開かなければならないのだ。もちろん帰りも、飲まず食わずというわけにはいかない。そして食料が無いダンジョン行など、悲惨なだけだ。
考えれば考えるほど、今の状況は絶望的だった。
セージには、どうしようもない。
「セージ、顔を上げろ」
まるで沙汰を待つ囚人のように立ち尽くしているセージに、ガルトスの重々しい声が降り注ぐ。
セージはうつむいていた顔を恐る恐る上げた。
ガルトスの鋭い眼光が、セージを貫く。
「…ふむ」
セージが思わず身をすくませると、ガルトスは納得したように、重々しくうなずいた。
「本気で、悪いと思っているようだな」
「はい…」
しかと、セージはそう答えた。
こうなれば、やれることはもうない。
あとは引き返すしかできない。そして引き換えして、無事に帰れるような状況ですらない。
帰りの食料すらない。
飢えに苛まれれば、人間はどんなことでもする。ダンジョンで遭難し、仲間の肉を食ってしのいだなんて話は、どこにでもある。
こうなったら、最悪、その身を差し出せなんて状況になっても仕方ないだろう。
そんな気持ちで、ガルトスを見た。
「なら良い」
見上げたガルトスの顔は、思っていたものとは全く違った。その厳つい顔に、小さな、不器用な笑みをたたえていた。
「え?」
「良いと言ったんだ。気にするな」
呆気にとられていると、そんなセージの肩に、篭手に包まれた大きな手が、ぽんと乗せられる。そして、ガルトスが頭を下げた。
「誰でも、間違いはある。今回の件は、オレの采配ミスだ。すまん」
「で、ですが…!」
自分が悪いのだ。
セージは言いたかった。本当なら、もっと警戒できたはずだ。炎の精はもともとダンジョン内で探索者の荷物を焼く厄介者として有名だ。炎の精なら、魔力感知をもっとしていればよかった。もし火がついてしまっても、火の備えがあれば対処できたはずだ。
あとからあとから、あの時こうしておけばという思いが溢れてくる。
そんなセージに、ガルトスは小さく首を振った。
「いや、オレのミスだ。食料は、もともとかなり厳重に管理していたはずだったんだ。本当なら炎の精なんていうのは魔術師の管轄だ。だが、昨日の戦闘で少々疲れていたらしい。リーダーのオレが見ていなければならなかった。だからオレのミスだ。すまん」
そういって、頭を下げる。
セージは言葉が出なかった。
「セージ、私もごめんね」
そう言って声をかけてきたのは、ガルトスのパーティの魔術師、マカだった。
どことなくおちゃらけた雰囲気の魔術師なのだが、今はしおらしく眉を下げている。
「本当だったら、あんたに一回経験させてあげようって話だったんだよ。食料は私も見てるからさ」
「え?」
もともと、新進気鋭の冒険者として熱心だったセージを見込んで、今回の荷物番を任せたのだという。
もともと食糧は重要だ。新人一人に任せるわけもなく、マカも魔法で見ている予定だったのだとか。それを教えないことで、ダンジョン内の警戒という経験を積ませてみようということになっていたらしい。
ところが昨日の戦闘で少々力を使いすぎていたせいか、マカが魔力感知に穴を作ってしまった。
それが今回の顛末なのだという。
「だから、あんたは気にしなくていいのよ。悪いのは私達。炎の精なんて、真っ先に気づかなきゃならないのに」
「そ、そんな…」
そんなことを言われたセージは大混乱だった。
期待されていたという喜び。
やはり任せきりにはされていなかったという失望。
そして、若干の安堵。
そんな混ざりあった気持ちで、言葉が出てこない。
「ま、そんな感じなのよ。悪いわね、この堅物が余計に緊張させちゃって」
そう言ってガルトスの鎧をぺしぺし叩く。
その様子をガルトスはなんとも言えない表情で見やっていた。
「だから、あんたは悪くないのよ。いいわね?」
そう言ってマカは茶目っ気たっぷりに、パチリとウィンクして話を締めくくった。
「ですが、結局食糧はどうしようもありませんね」
そう言って腕を組んで唸っているのは、僧侶のクレストだった。神経質そうな顔を更に歪め、胃の部分を擦っている。
マカが威嚇するように声を上げた。
「なんだってあんたはそう暗いのよ。みんな個別の非常食くらいは持ってるでしょ?」
「3日分がいいところでしょう? こんな深いところから戻るには、少々心もとない。それに、大赤字ですよ?」
非常食と言っても、せいぜい干し肉と少量の水だけだ。帰り道も、いくら魔物を避けてもそれなりの戦闘が予想される。とてもではないが耐えられるものではないだろう。
それに資金だ。この探索の人数を集めるのにもそれなりに資金がかかっている。もともとこの奥のボスを討伐することで、収支はとんとんか少しもとがとれるかという予定だったのだ。このままでは運勢資金が枯渇する。切々と説教めいた口調で言う。
セージは胃が引き絞られる思いだった。
「…すみません」
「あなたは悪くありません。この色ボケ魔女が全ての元凶です」
「なんですって?」
ピシャリとセージに言って、クレストはマカをにらみつける。
それを聞いたマカも、負けじとクレストを睨みつけると、ギャーギャーと言い合いが始まってしまった。
「…セージ」
置いてきぼりにされたセージが途方に暮れていると、ガルトスの重々しい声が降っていた。
「まあ、そんなわけだ。気にしないでくれ」
そういうガルトスの声は、思いの外優しかった。
セージは、思わず熱いものがこみ上げた。
「…とはいえ、引くにしろ、なにをするにしろ、食糧はなんとかしなければなりません」
それからしばらくして口論も収まると、クレストが改めていう。
それは最も直近の課題だった。こういうことを提案するのが、クレストの仕事だ。
「…どうしましょう」
探索メンバーを一度集め、車座になって話し合う。
今回集められたメンバーは一様に暗い顔だ。セージもその環の中に肩身を狭くして座る。
ガルトスはメンバーを集めると、今回の件が自分の不手際だったこと、今回の探索を諦める可能性を説明し、改めて深々とメンバーに謝罪した。
『竜殺し』ガルトスに頭を下げられ、最初はセージを責めようとしていたメンバーも口をつぐむ。
それを見回したガルトスは、一つうなずき、重々しく口を開く。
「そこで、相談だ」
その声は、場を圧倒していた。ここに座ったメンバーのすべてが、固唾を飲んで次の言葉を待つ。
ガルトスはしばらくの間を置いて、言った。
「…全員、300G(ゴルド)は持ってるか? なければこちらから支給するが」
%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
ガルトスはメンバー会議で、300Gがあるか、ないかを端的に聞いた。全員があると答えた。
300Gとは、だいぶ安い定食屋の一食分の料金だ。普通なら500Gくらいが相場だ。
なんでいきなりそんなものの有無を聞いたのか、座ったメンバーは目を白黒するばかりだった。
だが、もともとガルトスと同じパーティのマカとクレストは真剣な目でメンバーを見回していた。その目には有無を言わさないなにかがあった。
全員、あると答えた。
「ならばよし」
返答を聞くと、ガルトスは満足そうにうなずいて立ち上がる。そのまますたすたと部屋の隅に行ってしまった。
セージが慌ててついていくと、ガルトスは腰に下げた袋から、なにか、四角い箱のようなものを取り出した。
「…ガルトスさん、どうしたんです?」
「ああ、これから食料の調達をする―――できれば使いたくなかったがな」
それだけ言って、ガルトスは辺りを見回した。ここはダンジョンの中でも、小さな部屋になっている場所だ。
その角にちょうど平らな壁がある。ガルトスはそれを見つけると、そこに向かって歩き出す。
言われたセージの頭はハテナだらけだ。
「…
「ああ、ここでだ。ただ、それには少し、カネと手間がかかる」
ガルトスはそれだけ言って、その平らな壁の前に立つ。
手に持っていた小さな箱をその壁に押し付けたように見えた。
そう見えたのは、箱を押し付けた瞬間、その壁が消えたからだ。
消えたように見えたのは、箱を押し付けた壁が、一瞬で透明になったのだと一瞬あとに気づいた。
それをセージは昔、一度だけ似たものを見たことがあった。それはガラスだ。だが、ガラスというのはもっと曇ったものだったはずだ。少なくとも、こんなクリスタルみたいなのは、王都くらいじゃないと使われていないはずだ。そしてそのガラスの向こうからは、光が溢れている。
そんなものが突然現れた。セージはパニックにならないように抑えるので精一杯だ。
対するガルトスは、それを見ても落ち着いた様子だった。押し付けた手を放し、一歩下がって、また前に出る。
ぴぽぴぽぴぽーん。
ガルトスがそんな儀式めいたあるき方をすると、ガラスの扉が左右に割れた。
そして、なにか聞き慣れない甲高い音が耳朶を打つ。セージには、
「いらっしゃいませー」
中にはいると、そこは到底ダンジョンの中とは思えない、見慣れない空間が広がっていた。
右側にいくつかの棚が並んでいる。左側にカウンターがあり、人が立っている。
一瞬、そこが何なのか、セージにはわからなかった。だが、カウンターの上にある文字を見て、なんとなく把握する。
「…店?」
自分で言った言葉がわからなくて、セージは頭の中でその意味を咀嚼した。
自分で感じた印象と、中の光景が結びつかなかったのだ。
清潔に磨かれた床。天井からは真っ白な光は煌々と輝いている。これだけでも、高級な宿屋でもお目にかかれない代物だ。
そして棚には所狭しと色とりどりの商品が置かれている。これだけでも珍しい。物取りのことを考えれば、高級な店になればなるほど、商品は奥にしまい込む。すくなくとも、こんな光景の広がる店を、セージは知らない。
だがカウンターの上の看板に、『お会計』と書かれているのが、ここは店だよと主張していた。
セージが混乱していると、ガルトスが物怖じせずに中に入っていった。
「おや、ガルトスさん、いらっしゃいませ」
「すまんが、『ベントー』はあるか?」
「それでしたら、いつもどおりあちらの棚です。新作、ありますよ?」
「そうか。すまんが、他のものが直に来る。騒がしくしてすまん」
「いえいえ、『緊急くん』を使われるくらいですから、なに買ったのでしょう。そういうときの『ニコニコマート』です。ぜひご贔屓に」
そう言ってカウンターの中にいる男は、ニコニコと笑顔でガルトスに対応していた。
この男の格好もセージには奇妙だった。
やけに派手な赤と白のしましま模様の上着を着ているのだ。それも半袖。虫や汚れを考えれば長袖が主流な今時珍しい格好だ。しかもこの男、にこにこしてるのだが目の下のクマがすごい。寝てるのか?
「セージ、すまんが、みんなを連れてきてくれ」
話がついたのか、ガルトスがセージに声をかけてきた。セージははっとして、急いで言われたことを実行した。
「ありがとうございました」
メンバーを引き連れて店に戻ったセージは男に見送られて、袋を持って店の外に出た。
なんだか妖精に化かされたような気分だった。
後ろを見れば、他のメンバーがカウンターの前にズラッと並び、男が一人でひたいに汗を流しながらそれを捌いている。
なんだか気の毒な光景だった。
そのちぐはぐな印象に首をひねりながら、セージは自分の手元の袋を見る。
その袋には、ガルトスの言う『ベントー』が入っている。
店の中の商品は驚くことばかりだった。
右に入ってすぐの場所には、見たこともないような本が大量に取り揃えられていた。本なんて一冊10000Gはくだらないはずなのに。
例えば菓子。袋に入った菓子にも驚いたが、王都でも貴重な砂糖を使った菓子があった。
右側の一番奥の透明な棚には様々な飲み物が取り揃えられ、なんと酒までおいてある。しかも、そのどれもが冷たいのだ。
それだけでも十分なのに、この『ベントー』、なんと温かい。
『温めますか』と男から聞かれたときは、なにを言っているんだと思った。
男から説明を受け、試しに温めてもらうと、男は『ベントー』を後ろの箱に入れてナニカのボタンを押した。そしてすこしして出てきたとき、『ベントー』は熱々の状態になっていた。
『ベントー』自体も不思議な箱に入っているが、これは食べないでくださいねと念押しされた。
どこをとっても、何もかも不思議だ。
一体どれほどの魔法やアーティファクトが使われているのか、見当もつかない。
そしてこの『ベントー』が、なんと300Gだ。
『カラアゲベントー』という名前らしいが、他にも様々な種類があった。資金的に余裕があったのでほかも試してみようかと思ったが、ガルトスから一つにしておけと言われたので自重したのだ。他にも色々あったが勝手がわからなさすぎて辞めた。
セージは改めて振り返って店を見ると、変化したのは例の透明な壁だけではないことがわかった。
そこには巨大な透明な壁が広がり、店の中が一望できるようになっている。そして、その透明な壁の上に男が着ていた上着と同じ配色の一直線な看板が出ている。
入口の上には、『ニコニコマート』という店名が書かれていた。
「…美味い」
改めてキャンプに戻って、『ベントー』を食べる。袋の中には、なんとフォークが入っていた。材質はよくわからないが、どこまでもいたれりつくせりだ。
箱を開ければ、外からも見えていた茶色の肉の塊と、白いライスが入っていた。ライスはこの辺りでは珍しいものだ。
肉の塊を、一つ取って食べてみる。一度かじっただけで、ジュワリと肉汁が口の中に広がった。今まで食べたこともないほどうまかった。
メンバーの中には食べ慣れたパンを買っていた者もいる。そちらもふわふわした白いパンだ。一口一口が甘いらしい。
黒パンしか食べたことがないセージには想像できなかった。
そうして、全員が満足な食事が取れたのだ。
『ニコニコマート』は、全員が出るといつの間にか消えていた。なんとも、不思議な店だった。
「何だったんですかアレ?」
一息ついたセージは、思い切ってガルトスに聞いてみた。
『カルビベントー』というのを食べ終えて、水で一息ついていたガルトスはふむ、と唸って、一言だけ言った。
「わからん」
「え?」
あまりにも簡潔な一言だった。
そのあっけなさに、セージは次の言葉が見当たらない。そんなセージの様子をよそに、ガルトスが続ける。
「ただ一つわかってるのは、アレはダンジョン都市のセファンにあるっていうだけだ」
「え、セファンですか?」
セファンはここから東に50里は行ったところにある都市だ。
意味がわからない。
「なんでそれがここに?」
「わからん。あの店主がすごいのか、なんなのか、今まで何人もの魔道士が挑んだが、謎なままだ。わかってるのは、飯が美味いってことだけだ。あと、次も飯はあそこだぞ?」
「…え」
そう言うと、セージの目の色が変わったのを、ガルトスは見逃さなかった。
セージはまた物欲しげな目で、さっきまで『ニコニコマート』のあった壁を見つめている。
ガルトスは内心ため息をついた。
だから使いたくなかったのだ。
一度あそこの味を知ってしまうと、冒険者は皆『セファン』を目指す。きっとコイツらもあそこの客になるだろう。だができれば使いたくなかった。
『ニコニコマート』は恐ろしく便利な店だ。
セファンの都市提督から内々で箝口令が出ている程度には便利な店だ。広まれば王都から面倒な使者が出てくるだろうという配慮だということになっている。だが、一番の理由はそれではない。
「店主すまん」
本当の理由は、一人で24時間営業の店を回すという、気狂いじみた店主を慮ってというのは、セファンを知る冒険者の暗黙の了解だ。
ちなみにベントー一個というのは例の温めの手間をかける店主の負担を減らすためのセファンのルールだ。それができないやつは放り出せというのがセファンでは普通だったりする。
こいつらにはしっかりと念入りに口止めして、説明しないといけないだろう。そう思いながら、ガルトスは小さくため息をついた。
ちなみにボスはその日のうちに安全に討伐された。
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