びー・おぁ・えいち 〜気になるアナタはどっちがお好み?〜

北森青乃

プロローグ

  



 春。


 4月。


 新学期。


 そして新しいクラス分け。


 まぁ、今年度を占う重要な事ではあるんだろうけど……別に1年生の時以上のドキドキとワクワクはないのも事実。ここ1年で同じクラスだった人達とは仲良くなれた気はするし、その繋がりで他のクラスの奴らとも見知った仲にもなった訳だが……まぁ中には例外も居る訳で、


「おっ、おい! 来たぞ? ばんじょうさんだ」

「やっぱ可愛いよなぁ」


「きっ、綺麗すぎるよぉ」

「お話しても良いのかな?」」


 こんな感じで、接点のなかった人が同じクラス……何て事もある。ましてやそれが、そこいらのアイドル並みに整った顔立ちをしていてスポーツ万能、成績優秀。学校での認知度が、間違いなく100パーセントであろう超恵まれたエリートだとしたら、教室中がこんな様子になるのも無理はない。


 磐上彩音ばんじょうあやね。これまで遠くから見る機会はあったけど、クラスも結構離れてたしここまで近距離で見るのは初めてかもしれない。にしてもあの髪の毛ツヤありすぎじゃね? 黒髪ロングであれはヤバイだろ? しかもクッキリ二重でまつ毛長っ! しかも顔は言わずもなが、胸も結構……ってパーフェクトウーマンかよっ! ん? あぁ、でもやっぱり……


『おはよう。はるしもくん』


 うおっ! っていつの間にこんな至近距離に? てかなぜ挨拶? 


「おっ、おはよう」


 って、焦ったぁ! 反射的に返事したけど、なんでここまで……って前の席なのかよっ! 


 でもちょっと待て? そもそも磐上さんとはほぼ初対面みたいなもんだよな? なんでわざわざ……まぁ、別に今はそんな事いいか。


 それにしても、新学期早々学校でトップレベルの美少女と同じクラス、ましてや席が目の前なんて恵まれた方なんだろうか? ……なんか挨拶された瞬間、他の野郎達からの視線が滅茶苦茶痛いような気がするけど気のせいだよな? そうだよな? ……あれっ? そいえば……


 磐上さん、俺の名前知ってんの?





 ――――――――――――――――――





 ……よっしゃぁぁぁぁ!


 私は、私は今猛烈に感激してるっ!


 なぜかって? そりゃ4月、新学期ときたら最初に待ち受けるのは、クラス分けっ! 1年の時は正直そこまで気にはしなかったよ? まぁ今回もそこまで重要視はしてなかったよ? でもねでもね? 同じクラスにあの人の名前見つけたらテンション上がるでしょ?


 あぁ感激の余り興奮してたけど、教室近付くにつれて緊張してくるぅ! もう既に居るのかしら? 気付かれない様に朝の顔見たいなぁ。でも、あくまで普通に普通にだよ? 他の人にも挨拶忘れずにだよ? 分かった? 私!


 ガラガラ


 ……居たっ! 開けた瞬間、目線の先に居るなんて最高過ぎるっ! ……はっ! 自分を見失っちゃダメっ! さりげなく見つつ、挨拶しながら黒板に張られた席図を……っ! 待って? わたしの出席番号が書かれてるこの席って、まさか……あの人の目の前っ!


 うぅ……ヤバイ。嬉しいけど、緊張する。どうしよう? ファーストコンタクトは大事よ? って! 私の事見てる? なんか見てない? 気のせい? 大丈夫? ちゃんとシャンプーもリンスもしたし、身だしなみはいつも通り。なんか結構視線感じるけど……かと言って最初から積極的に行くのは厳禁。今の男の子は草食系だって言うし、焦らず焦らず普通に普通に……話し掛けるっ!


『おっ、おはよう。晴下はるしも君』


 いっ、言っちゃったっ! ……? あれ? なんかお腹の辺り見てる? しかも……なんか溜息ついたっ!?


「おっ、おはよう」


 って、不意打ちで来たぁ! 顔見てるっ! 動揺しちゃダメだぞっ! 更ににこやかな表情を見せて……席に座るっ! 


 ……ふぅ。きっ、緊張したぁ。でもまさか同じクラスで、しかも後ろの席なんて……新学期早々嬉しすぎるっ!





 ―――――――――――――――





 なんで俺の名前知ってんのかな? まぁ光栄ではあるけど……ってか滅茶苦茶良い匂いするっ! バラ? こりゃ凄い。目の前にこんな完璧美少女が居るシチュエーションて……やっぱ結構恵まれてんじゃね? 

 まぁ、顔も可愛いし、成績も良い。これで噂通り性格も良いなら最高か? 

 あっ、でもなぁ……




 ――――――――――――




 とりあえずファーストコンタクトとしては上々? 失礼な事はしてないよね? うん……あっ! でも気になる事が1つ……なんか私の事見てたのにお腹の辺りに視線向けた瞬間溜息したような気がする。

 お腹……はっ! まさか……やっぱり!?  




 ―――――――――




 実に惜しいんだよなぁ……



 ――――――



 目に付いて、ガッカリしたに違いないんだっ! 



 ―――



 そう。

 そうっ!





「ちっちゃ過ぎなんだよな……お尻が」

『この大きな……お尻にっ!』



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る