桜の記憶

「あー……、でもあれだな」


「ん? 何?」


「怪我、ばれたら問題だよな」


 麻痺して痛みを感じなくなっている自分の耳を、巻いたタオル越しにそっと触れてみる。


 状態がどうなっているのか見ていないのでわからないが、出血量からして見過ごしておけるレベルではないかもしれない。


「叱られる?」


「たぶん。言い訳用意しとかねぇと……。つか、お前は平気なのか? かなりダメージ受けてるだろ?」


 渋い表情で唸る俺に、桜は笑う。


「平気だと思う。翼はもう戻らないかもだけど、それ以外はすぐに治るよ」


 どうやら、回復能力も尋常ではないらしい。


「そうか……。羨ましいな」


 心底そう思いながら、俺はポンッと桜の頭に手を乗せる。


「そんじゃ、行こうぜ。そいつ持てるか?」


「うん」


 顎で示した片桐を見て、桜が返事を返す。




 まだ、この悪魔少女には問題が山積みになっている。


 人間ではない身で、今後どうこの世界で生きていくのか。


 最終的に、彼女はどうなってしまうのか。

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