桜の記憶
ガーディアンや獣人みたいに単純な設定に合わせ、受動的に動いていたわけではなかった。
それゆえに、少しずつ自我や感受性も高くなり、そして今の、設定という枠を越えようとする桜を形作ったのだろう。
「やめろぉぉぉぉぉ!!」
暗い廃墟に、片桐の叫びが響く。
「……」
俺は黙ってその光景を見つめ、やがて、力を吸い取られたかのようにその場へ座り込んだ敵を確認し全てが終わったことを自覚した。
静かに片桐の頭から手を離し、桜が振り返る。
「……雄治、あたし生きてるよね?」
少しだけ不安そうに口を開く少女へ、俺は優しく頷く。
「ああ、大丈夫だ。生きてるよ」
片桐を倒せば桜は自由になる。
そう考えると同時に、桜も自動的に消えてしまうのではという万が一の可能性も危惧していた。
しかし、その不安もどうやら杞憂だったらしい。
全てが、うまく成功してくれたようだ。
ゆっくりと桜の側へ歩み寄り、座り込んだまま微動だにしなくなった片桐を見下ろす。
射程距離ゼロ。全力で発動した桜の能力をまともに受け、記憶の全てが消し飛び人格すらも無くした哀れな創造主。
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