桜の記憶
桜が示したまさにその場所から、二匹のネズミが飛び出してくる。
「あれに任せてみた」
飛び出したネズミは、真っ直ぐに片桐へと突進していくとそのまま羽虫たちに紛れて見えなくなる。
「ところで、ガーディアンは?」
油断なく成り行きを見守りながら問うと、桜はさぁ、と首を捻る。
「まだ森の中探してるんじゃない?」
「気楽に言うなよ。万が一ここに戻ってきたらアウトだ。その前にケリをつけねぇと……」
言って、焦らされる心地で片桐を注視していると、飛び込んでいった二匹のネズミが撤退するようにこちらへ走り寄ってきた。
段々と近づくにつれ、その小さな口にそれぞれ何かをくわえているのが確認できる。
「成功だね」
嬉しそうに言う桜に小さく頷いてから、俺はしゃがんでネズミが側に来るのを待つ。
二匹のネズミは俺の前で止まり、それぞれ口にくわえていた物を足元へ置いた。
「でかしたぞ」
置かれたのは、片桐が所持していたライターと手帳。
全ての元凶を反映させてきたその一冊を、俺は手に取った。
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