桜の記憶

 立ち上がる暇もないと判断を下し、真横へ回転。


 いつ飛び出してくるかわからないモンスターの攻撃。


「くそっ……!」


 端からみれば地味な攻撃だろうが、それをどうにかできない自分に腹が立つ。


 転がったばかりの地面からまたサンドワームが出てきたのを確かめて、空中にいる隙に立ち上がる。


(叩き落とせないか――?)


 急いで足元を探り武器になりそうな物を物色するが、使えそうな物は何もない。


「――!?」


 しかし、それとは別に気づいたことがあった。


 時間にすれば、ほんの数秒しか経過していないはずだ。


 いつの間にか、片桐の側にいたサンドワームが消えていた。


 その意味を理解し、表情が強張る。


 反射的に下を向き、ほとんど本能だけで上半身をのけ反らせた。


 薄暗い闇の中、顎を掠めてサンドワームが飛び上がる。


(やっぱりか――っ!)


 二体目に気を取られた隙に、最初の一体を仕掛けてきていた。


 二体まとめての相手はさすがに余裕を持てる自信はない。


 このままでは、確実にじり貧だ。

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