桜の記憶

 再び姿を隠すサンドワーム。


 そのままこちらへ移動してきているのか、それとも片桐を守るために様子を探っているかはわからないが、少なくとも襲われずにすむ方法が一つある。


 片桐の周囲を回りつつ、手にした石を投げつけた。


 大して威力があるわけでもない投石だが、そんなことは問題ではない。


(来た!)


 片桐の背後から投げられたその小石を弾き飛ばすため、またサンドワームが姿を現した。


 遠距離から片桐に攻撃を仕掛けていれば、サンドワームはそれを防ぐことを優先しこちらへの攻撃は中断される。


 つまりは、お互い拮抗したような状態を保つことができるわけだ。


(別に倒すことを考えなくても、時間さえ稼げりゃそれで良い)


 桜が戻るまでの残りの時間。


 それを凌ぐ苦肉の攻防。


 足元に転がるガラクタや石を、適当に投げ続ける。


 予想通りにその全てを叩き落としていくモンスターに、俺は苦笑を漏らした。


「ずいぶんと律儀な護衛だな。設定に従順過ぎんのも、どうかと思うぜ?」


 吹き出す汗が頬をつたう。

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