桜の記憶
「生きてれば見れるぞ。帰る場所が無くなっちまったなら、ここにいれば良い。死にたくないって思うなら、とことん足掻いて生きれば良いんだ。自分から死ぬことを受け入れるなんて、ただの馬鹿だ」
「……」
「あんな近場の桜くらい、いつでも一緒に見に行ってやるよ。なんなら、有紀や根崎たち誘って全員で花見するのも楽しそうだろ?」
「花見……お祭り?」
たぶん、花見を知らなかったんだろう。
そっと俺の頭に触れ、桜は記憶を読む。
「まぁ、実際は祭りとは違うんだろうけど……、俺にとってはそういうノリというか認識だな。みんなで好き勝手に騒ぐんだ。屋台とかもあるし、絶対盛り上がるぜ」
目の前に立ち塞がる絶望を打破する術もなく、ただ途方にくれるだけの状況の中で、俺は無理矢理笑ってみせる。
こんな言葉が気休めにすらならないことはわかってるつもりだ。
でもきっと、無力さに押し潰されて鬱ぎ込んでいる姿を晒すよりは遥かにマシだろう。
「……楽しいなら、行ってみたいな」
桜もきっと、それをわかってるんだと思う。
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