桜の記憶
桜の能力が通じないこと、異世界のモンスターを召喚できること、摩訶不思議な方法で獣人を消去したこと。
最初、敵は複数いるのかとも疑ったのだが、検討違いも甚だしかった。
(それじゃあ、桜の記憶から狼男に関する部分が欠如したのは……)
気づき、そっと桜を見やる。
この真実に何を思っているのか、当の本人は呆然としたように片桐を見つめていた。
「……なぁ、桜。お前、今あいつが消したドラゴン、見てたか?」
そんな彼女へ、恐る恐る訊ねてみる。
「え……? 何の話?」
はっとしたようにこちらを向くと、桜はぼんやりと首を傾げてみせた。
「あいつの側にいたドラゴンだよ。今、消してみせただろ?」
「ドラゴン……?」
昼間のやり取りの繰り返しになった。
この様子からして、桜の頭からは既にドラゴンの情報はリセットされている。
「結局、全部か……」
意図せず、声が漏れる。
全ての疑問や不安要素は、片桐の能力によって生まれたもの。
「納得してくれたかい? 本音を言うとね、長沢くんには申し訳ないことをしたと思っているんだよ。わざとじゃないとは言え、僕の実験に巻き込んでしまうようなかたちになっちゃったみたいだからさ」
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