桜の記憶

「異世界から次々に化物を呼び出せるというのも、違う。それはきみの勘違いだ。僕の能力はそういったものじゃない」


「あ? だったら、どうしてこいつらを呼び出せるんだ?」


「……僕はずっときみたちと行動を共にしていたわけじゃないし、監視していたわけでもない。だから断言するつもりはないけれど、長沢くん、きみは根本的に事実を見誤っているんじゃないかな」


 そこで片桐は、俺から桜へと視線をスライドさせる。


「サクラ、きみもだ。きみも、始めから真実を何も理解できてはいない。ただ、ありもしない話の答えを探し回っていただけ……」


「ありもしない話……? 意味がわかんないよ」


 さすがの桜も、片桐の言葉に表情を曇らせた。


 勿体ぶっているのか、それとも単に回りくどい性格なのか、要領を得ない説明に辟易しそうになってくる。


「話の核心を言えよ。これ以上焦らすな」


 押し殺した声で先を促す。


 こんなことで威嚇できたなどとは到底思えないが、片桐は僅かに息をつく素振りを見せると素直に話を続けてきた。

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