桜の記憶
はっきりと認識することはできないが、屋上に得体の知れないものが立っていることに気づいた。
身長は高い。
二メートルは越えているだろう。
基本的な姿形は人間と一緒ではあるのだが、どこか違和感がある。
と、その影は突然高く飛び上がると翼竜の後へ続くようにして俺たちの真正面へと落下してきた。
ガシャリという金属音が、今度ははっきりと耳に届く。
「……嘘」
新たに現れた者の正体を視認して、呆然とした呟きを桜がこぼした。
「あれも知ってるのか?」
目線だけを向け、問う。
身体中を銀の鎧で包み、両手にはそれぞれ剣と盾を握る中世ファンタジーにでも出てきそうな出で立ちの敵。
ゲームに出てくるような騎士と言えば、そのまま通じるような容姿だ。
「ガーディアン……」
そんな新手の刺客から目を逸らさぬまま、桜がそう答えてきた。
「ハデスを統べる魔王の護衛部隊……。どうしてあんなのまで出て来るの?」
「魔王の護衛部隊?」
「雄治、ごめん。ちょっと思ってたよりやばいかも……」
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