桜の記憶
ほんの数秒、無言で見つめ合う。
そして。
「……でもそれは、あくまできみの記憶の中だけの話だ」
パチンと、片桐が指を鳴らす音が響く。
直後、頭上で金属が擦れるような微かな音が聞こえた。
何の音かと、その正体を確かめようと上空を見上げる暇もなく――。
「――っ!」
まるで体当たりでもするかのような勢いで、桜はまたしても俺を掴み横へと跳んだ。
「うおぉぉ!? ちょっ――桜!」
跳躍した桜は、そのまま手摺を飛び越え真下へと落下していく。
今まで自分たちが立っていた場所が、視界から隔離される。
何かを叩きつけるような破壊音が聞こえたが、確認ができない。
ただ、あの場に留まっていたらやばいことになっていたのであろうことは直感的に想像できた。
衝撃を殺すようにして、桜が着地。
そのまま疾走しなるべく広い空間を確保すると、俺を離すことなく振り返り相手を見上げる。
再び翼を広げた翼竜が、優雅な動作で下降してくる。
そして、もう一体。
「あれは何だ?」
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