桜の記憶
「記憶無くても、そういうことはわかんのか?」
どこまで本気か判断しかね、俺は胡散臭げに訊いてみる。
「どうだろ。漠然と頭に浮かぶ感じなんだよね。自分でも不思議」
「あっそ……」
つまるところは、その程度の信憑性だ。
「お前の記憶、不安定な部分があるみてぇだし、このまま見放しちまったら目覚めも悪い。ぶっちゃけさ、戦いは無理でも話し合いに関しては俺の方がお前よりイニシアチブ取れると思うから、あいつから情報聞き出すなら一緒にいた方が良いだろ?」
「え? あたしだってそれくらいはできる――」
「いや、普段からお気楽なお前には無理だ」
桜の言葉を遮り断言する。
「ただ、もし戦う羽目になったら、俺は役に立てない。だから、そうなっちまったときは、情けねぇけど後はお前に任せるよ。お互いできる役割を果たすってことだな」
「んー……。来てくれるのは嬉しいけど。本当に平気? 今までで一番大変かもしれないんだよ?」
まだ渋い表情の悪魔に、苦笑を漏らす。
「しつこい。危ないと思ったら、勝手に逃げるから安心しろ。昨日のバトル見てどんだけ尋常じゃないかは理解したつもりだし」
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