桜の記憶
◆
春であれば、もっと壮観であったかもしれない。
しかし、残念ながら今は夏休みが終わり徐々に秋が訪れようとしている季節だ。
ピーク時には多くの花見客や散歩をする人々で賑わうこの遊歩道も、今は閑散としていてほとんど人の姿は見当たらなかった。
地元では有名な桜並木として知られる場所で、記憶では八十本くらいの桜の木が道の左右に等間隔で並んでいる。
その遊歩道の片側は比較的大きな川になっており、川遊びや釣りをしている人をよく見かけることがある。
現に今も、三人くらいの男が釣りをしているのが目視できた。
「んで、こんな場所に来て話すことってのは昨日の件についてなんだろ?」
家を出てから約二十分。
自転車などは使っていないためここまでずっと歩いてきた訳だが、その道中桜は『カレーを食べる時に醤油をかける人がいたけどあれは何のためなのか』とか、『ウーパールーパーは土の中にいてもおかしくない姿だと思う』など、この上なくどうでも良い雑談ばかりをへらへらと話すだけで、本来の目的である話題は切り出す様子を見せなかった。
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