桜の記憶
「うん。ここで話しても良いんだけど、どうせなら外歩きながらの方が話しやすいかなって思って」
「……?」
気のせいかもしれないが、どことなく桜の様子がいつもと違う。
昨日あんなことがあったせいで無意識にそう見えてしまっているだけかもしれないが、何というか普段の彼女よりも微妙に雰囲気が異なるように感じる。
「行かない?」
僅かに首を傾げて訊いてくる悪魔少女へ、俺は小さく頷いた。
「わかった。ちょうど俺もお前に会いに行こうと思ってたところだったし」
スマホをポケットに入れ、机に置いていた財布を手に取る。
「あたしに? なんだ、じゃあわざわざ来なくても良かったんじゃん」
来て損したなぁと呟く彼女に、無言で部屋を出るよう訴えて退室を促す。
その後に続くように俺も部屋を出ると、そのまま階段を下りた。
「ん? あれ? 桜ちゃんもう帰るの?」
玄関に向かいかけた俺たちに気づき、姉貴がぽかんとしたように声をかけてきた。
「はい、雄治くん迎えに来ただけなので。お邪魔しました」
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