桜の記憶
しかし、すぐに訪れるはずの絶望的な衝撃は無く、代わりに身体が受けたのはトンッという僅かな着地感。
(……?)
恐る恐る目を開くと、俺を抱えた桜の足が何事もなかったように地についている。
「じゃあ、行こっか?」
お姫様抱っこをされた状態の俺に、悪魔少女は笑いかける。
一瞬、狐に摘ままれたようにポカンとなってしまったが、すぐに気持ちを立て直した。
若干もがくようなかたちで、まずは桜の腕から逃れようとするも異様な力でホールドされてうまくいかない。
「ちょっと、いきなり暴れないでよ。今更抵抗するなんて男らしくないよ?」
「違う……っ! こっ恥ずかしいんだよ、とりあえず下ろせ!」
こんなシチュエーション誰かに見られでもしたら最悪だ。
今のところ人気は無いが、いつ通行人に出くわすかわかったもんじゃない。
「下ろしても良いけど、雄治、靴履いてないじゃん」
「……お前のせいだろ」
間近にある顔を睨みながら呻いて、俺は靴下のまま道路に立つと一度庭へ入り、ベランダに置いていたシューズを履いた。
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