桜の記憶

 犬小屋で寝そべっていたポテマヨが尻尾を振りながら出てきたので、軽く頭を撫でておく。


 こういう時に大人しくしていてくれるのはありがたい。


 じゃあ行こうか、という桜の声に頷いて、俺は隣に並び歩きだした。


 住宅街の夜は思った以上に人の姿が少なかった。


 途中にあるコンビニなんかはさすがに客がいたりもしたが、そこを過ぎればまた無人の闇が行く手に広がる。


 残業帰りのサラリーマンやOL、何の用事で出歩いてるのかわからない自転車に乗った中年のおっさん、犬を散歩させている二十代くらいの男性。


 そんな程度の通行人とすれ違い、やがて駅前の広場に辿り着く。


 物陰から覗くようにして周囲の様子を窺うと、予想していた以上に警察の姿が目に付いた。


 事件が起きたばかりならば、やはりこういう状況になるのだろう。


 パトカーの赤いランプが五台確認できた。


 別の場所にはさらに多く停められているかもしれない。


 警察の人員はどれくらいだろう。

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