桜の記憶

「事件?」


 しかし、俺同様に情報を仕入れてはいなかったらしく、桜は意味がわからなさそうにきょとんとなった。


 仕方がないので、わかる範囲の状況を説明してやる。


「……ふーん、殺人事件か。大変だね、対応する人は」


 この猟奇的な事件に対し、悪魔少女はどんな反応を返してくるのか。


 そんな好奇心も僅かながらあったが、なんとも呆気ない感想を告げられただけだった。


「確かに警察とかは大変だろうけど。お前、気持ち悪いとか怖いとか思わんのか?」


「別に。あたし関係ないし。雄治は怖いの?」


「怖いと思うのが普通だよ。自分が生活してる場所で殺人が起きたんだぞ? 万が一犯人に遭遇したら、とか考えちまうしな」


「遭遇したら返り討ちにすれば済む話じゃん。大丈夫、雄治が襲われたらあたしが助けてあげるって」


「――おい」


 加藤たちがいる前でふざけた発言をかます桜。


 咄嗟に友人二人へ視線をやると、案の定ニヤけた笑いを浮かべてきた。


「お前ら絶対に勘違いしてるからな。つか、その顔ムカつくからやめろ」

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