桜の記憶

 たぶん、朝のホームルームにでも担任から何らかの話があるかもしれない。


 駅を利用している生徒なんかはどうなるんだろうか。


 日中や夕方くらいなら人出も多いため被害に遭う確率は低いと思うが、学校側としてはそれなりの対策を考えるはずだ。


「あ、雄治。おっハロー」


 萎縮した場に、突然お気楽な声が響く。


 はっとした加藤と笹木が首を後ろに向ける。


「男子だけで何の話してるの? またゲーム?」


 そんな二人の間からひょっこりと顔を突き出してきたのは桜だった。


「違う。つか、何だよ今の挨拶は。機嫌良さそうだな」


 心持ち助けられた気分になりながら、俺は悪魔少女へ軽口をたたく。


「ん? 機嫌は普通だよ。今学校に来る途中で友達におっハロー言ってる人見かけたから、とりあえず真似してみただけ」


 何がとりあえずなのかさっぱり理解できないが、まぁ、どうでも良い。


「桜、お前は駅の近くで起きた事件知ってるか?」


 ここまでの話の流れ的にも、どうしても気になってしまう。


 その衝動で俺は訊ねてみた。

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