桜の記憶

「大金……かどうかは微妙だけど、俺らにしてみれば四千だって安い金額じゃないのは確かだな」


バイトでもしている奴からすれば守備範囲かもしれないが、月五千円くらいの小遣いで生活をしているような学生からすれば、四千円の出費はかなり痛い。


 そんな浪費をしたら最後、その後は缶ジュース一本買うことにすら頭を悩ませる羽目になってしまいかねない。


「ふぅん、学生って大変なんだ」


 他人事のように呟いて、桜は開けた袋を元に戻す。


「大人は十万円以上するような機械を平気で買ったりするのに、何だか不公平な感じがする」


「そこは仕方ないだろ。大人になれば仕事で金手に入るし、自由に使ったりできるから。俺も早く自分用のパソコンとか買いたいんだよな」


「パソコン? ……ああ、あの四角い機械か。あれ凄いよね、色んな情報調べたり離れた相手と会話したりできるんでしょ?」


「スカイプのことか? 俺はまだやったことないから詳しくないけど、興味はあるな」


「やらないの? 雄治、家にパソコンあるよね?」

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